「お父さん、オレの奨学金を使い込んでくれてありがとう」――こんな衝撃的な書き出しから始まる広告ポスター。アプリ開発者の足澤憲(たるさわけん)さん(30)が、「父の日」にあわせて、IGRいわて銀河鉄道の盛岡駅と二戸駅に掲示したものだ。
新聞などでも紹介され、SNSを中心に大きな注目を集めたこの広告。掲出された背景には、足澤さんのバックラウンドに理解のある仕事仲間たちがいた。
J-CASTニュースは2021年6月22日、足澤さんに掲出までの経緯などを取材した。
「あなたみたいな人を救いたくて」
話題となった広告は、足澤さんが亡き父にあてた手紙の形式をとっている。前半は「パチンコも競馬もやってないのに、どうやって借金をこしらえたの?」「お金もないくせに新しいモノを衝動買いするのは、良くないと思うな」と、赤裸々な父への気持ちが綴られている。
しかしそんな父を見て、「どうやったらお金を稼げるのか」「どうやったらお金で損をしないのか」を考えるようになった。300万円の奨学金を工夫して返済した際には、ポイント還元で約6万円も得をすることができた――こんなエピソードも広告ではつづられている。
そうした経験から、お金にまつわる知識や情報を知っていれば苦労することはなかったのではないかと考えた足澤さんは、キャッシュレス決済のお得な支払方法を調べることができるアプリ「AI-Credit」を開発した。クレジットカードやスマホ決済など多様な支払方法から、どの組み合わせで支払いをするのが一番お得なのか一目でわかるアプリだ。
「3年半前にあなたみたいな人を救いたくて、スマホアプリを開発したよ」
今回の広告で、こう父に報告する足澤さん。最後は「お金について考えるチャンスをくれてありがとう」などと、亡き父への感謝を綴っている。
取材に対し足澤さんは、子供のころは「なんてひどい父親なんだ」と思うこともあったと話した。しかし現在は、全くそう感じていないのだという。
「むしろ特別な環境下にいれたおかげで、色々学べるチャンスがありましたので、今はありがとうと思えます。結局色んな人から愛されていた父だったように思います」