今夏に開催される東京五輪の観客数の上限が2021年6月21日に決まった。
大会組織委員会、政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)は21日、代表者を交えた5者協議をオンラインで開き、東京五輪の観客上限を収容定員の50%以内で最大1万人とすることを決定した。8月24日に開幕する東京パラリンピックに関しては7月16日までに判断するとした。
尾身氏提言「無観客が最も感染リスクが少なく望ましい」
東京五輪開催に向けて大きな注目を集めていた観客の有無に関する決定がなされた。5者協議によって導き出された結論は有観客での開催だ。「収容定員の50%以内、最大1万人」との条件が付いたものの、観客を入れての開催が明確となった。
今回の決定は、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長など専門家有志による提言に寄り添うものではなかった。分科会の提言では「無観客が最も感染リスクが少なく望ましい」としており、「最大1万人」の有観客はこの提言と大きくかけ離れている。
インターネットでは、五輪有観客によるウイルスの感染拡大を懸念する声は依然として強い。また、朝日新聞がまとめた最新の全国世論調査でもその傾向がみられる。
朝日新聞デジタル版は6月21日に最新の全国世論調査の結果を報じた。6月19~20日に全国世論調査(電話)を実施した結果、東京五輪・パラリンピックを今夏に開催する場合、「観客なしで行うべきだ」が53%で、「観客数を制限して行うべきだ」は42%だった。「観客なし」が「制限して行うべきだ」を11ポイント上回った。
開会式入場者数は2万人より「明らかに少ない数字」
一方、国立競技場で行われる五輪開会式の入場者数に関しても調整が進んでいるようだ。
開会式にはスポンサー招待客らを合わせた2万人ほどの入場者が予測されていたが、組織委員会の武藤敏郎事務総長は5者協議後に行われた会見で明言を避けながら「2万人」をやんわり否定し、2万人よりも「明らかに少ない数字」と説明した。
五輪有観客における具体的な数字が決定し、開催に向けて着々と準備が進められている。
大会の準備状況を監督する立場にあるIOC調整委員長のジョン・コーツ氏は、粛々と大会の準備がなされている現状に満足しているのか、5者協議の冒頭の歓談で軽口をたたくほどの余裕を見せた。
コーツ氏は15日にオーストラリアから来日し、3日間の隔離期間を経て現在、行動制限期間に入っている。スポーツ紙の報道によると、コーツ氏は来日して以来、行動制限を遵守していることから「たぶん私は小池知事から特別表彰状をもらえると思う」と語ったという。
観客の上限数が決まり、開会式の入場者数や選手村におけるルールについても調整が進んでいる。今後、感染状況が悪化し、緊急事態宣言が再発令された場合は無観客が検討される見通しだが、あくまでも開催を前提としたものとなる。東京五輪・パラリンピックは7月23日に開幕する。