過去の成功体験がカギに
CMは5月16日の週から大阪で試験放映し、翌週から関東に広げた。6月4日でいったん終了し、現在は同素材を使ったデジタル広告を展開している。通常のキャンペーンよりも大幅に予算を割き、「社内でも『これだけ流すんだ』と言われるくらい反応が良かったです」。
具体的なターゲット像は、ユーチューブやインスタグラム、フェイスブック、ラインなどで頻繁に動画をシェアしていて、「無料の動画編集ソフトだと少しこだわった映像が作れない、もう少し自分なりの動画を作りたい」とのニーズを持つ人だ。アドビ社では「ソーシャルビデオクリエーター(SVC)」と呼んでいるという。
「ピアノを習って一曲弾けるようになると、それを誰かに聞いてほしいと思うのではないでしょうか。動画でも、作品を作ったら誰かに見てもらいたいとの欲求が生まれ、家族や友達にネット上で共有して広がっていくという行動は見て取れます」(里村さん)
それを実感したのが、19年に写真編集アプリ「Lightroom(ライトルーム)」の電車広告を出稿した際だった。ユーザーの獲得に大きくつながり、SNSの投稿を目的とした「編集ニーズ」が高いことがわかった。ネット検索などのデータから、静止画だけでなく動画にも同様の需要があると気づき、マスへの訴求を検討し始めた。
ユーザーの拡大はアドビ社の業績からも読み取れる。同社の20年度決算は売上高が128億7000万ドル(前年比15%増)と過去最高を記録し、プレミアも大きく貢献した。里村さんは「昨年は緊急事態宣言により家で過ごす方が増え、動画編集を始めた方が多かったようです」と分析する。