JR西日本が、木次(きすき)線(備後落合~宍道)を走る観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」の廃止を発表した。
20年超の歴史をもつ「奥出雲おろち号」。広島と島根を結ぶ木次線の目玉で、同線を系液滴にも支えてきた存在だった。今後、木次線の運命はどうなるのだろうか。
老朽化により「奥出雲おろち号」は廃止
JR西日本は2021年6月3日、出雲市・木次~備後落合間を走る観光列車「奥出雲おろち号」を2023年度で廃止することを発表した。「奥出雲おろち号」は木次線沿線自治体からの要請を受け、1998年4月に運行を開始した。
トロッコ車両と窓付きの一般車両の計2両をディーゼル機関車が引っ張る。開放感のある車内から山陰の景色を堪能できることはもちろん、トンネル内では天井のイルミネーションが楽しめる。
土日祝や行楽シーズンを中心に運行され、利用人数は年間約1万4000人にもなる。このように木次線の看板列車として活躍してきたが、車両の老朽化が廃止の主因である。
なお「奥出雲おろち号」で使用される客車は先日、廃止が決まった「SL北びわこ号」と同じ12系客車だ。
気がかりな木次線の動向
「奥出雲おろち号」が走る木次線はJR西日本屈指のローカル線として知られる。2019年度の平均通過人員(1日1キロあたりの利用者数)はわずかに190人。旅客運賃収入はJR西日本管内の51路線のうち3番目に少ない。
時刻表からも木次線の現状がわかる。「奥出雲おろち号」を除くと全線走破の定期列車は1日上下各2本しかない。かつては中国地方と山陰地方を結ぶ陰陽連絡線の役割を担っていたが、周辺道路の整備により、現在ではローカル輸送に徹している。
またJR西日本自体がコロナ禍で苦しい経営を強いられている。21年5月19日に発表された「ご利用にあわせた列車ダイヤの見直し」では、木次線は対象線区から外れたものの予断は許さない。木次線の起点駅である備後落合駅に乗り入れる芸備線の一部に関して、JR西日本は岡山県新見市と広島県庄原市に対して「地域公共交通計画に関する申し入れ」を6月14日に行ったばかりだ。
現在のところ木次線の存廃問題は表に出ていない。しかし「奥出雲おろち号」の代替は検討されていないことから、木次線は観光の目玉を失うことになる。今後、最低限の地域輸送に徹するか、それとも違う形で観光客に注目される路線になるのか。どちらにせよ、難しい道が続くことに変わりはないだろう。