気がかりな木次線の動向
「奥出雲おろち号」が走る木次線はJR西日本屈指のローカル線として知られる。2019年度の平均通過人員(1日1キロあたりの利用者数)はわずかに190人。旅客運賃収入はJR西日本管内の51路線のうち3番目に少ない。
時刻表からも木次線の現状がわかる。「奥出雲おろち号」を除くと全線走破の定期列車は1日上下各2本しかない。かつては中国地方と山陰地方を結ぶ陰陽連絡線の役割を担っていたが、周辺道路の整備により、現在ではローカル輸送に徹している。
またJR西日本自体がコロナ禍で苦しい経営を強いられている。21年5月19日に発表された「ご利用にあわせた列車ダイヤの見直し」では、木次線は対象線区から外れたものの予断は許さない。木次線の起点駅である備後落合駅に乗り入れる芸備線の一部に関して、JR西日本は岡山県新見市と広島県庄原市に対して「地域公共交通計画に関する申し入れ」を6月14日に行ったばかりだ。
現在のところ木次線の存廃問題は表に出ていない。しかし「奥出雲おろち号」の代替は検討されていないことから、木次線は観光の目玉を失うことになる。今後、最低限の地域輸送に徹するか、それとも違う形で観光客に注目される路線になるのか。どちらにせよ、難しい道が続くことに変わりはないだろう。
(フリーライター 新田浩之)