侍ジャパン・稲葉篤紀監督が2021年6月16日に発表した東京五輪の内定24選手の顔ぶれが、波紋を広げている。
今季度重なる故障で本調子に程遠い巨人・菅野智之、昨季は不調で守護神を剥奪されたDeNA・山崎康晃が選出される一方、現在リーグトップの58打点を叩き出している巨人・岡本和真、19年に首位打者を獲得するなど強打の捕手で知られる西武・森友哉、9日の日本ハム戦(札幌ドーム)で史上最速のNPB通算150セーブを達成した松井裕樹、新人ながら12球団トップの7勝をマークしている楽天・早川隆久がメンバーから漏れた。
球界関係者は今回の選考について、「予想通りですね」と分析する。
「稲葉さんらしい選考だなと感じました」
「稲葉さんは慎重な性格です。現在のコンディションが良くてもそれだけでは選ばない。国際試合に向いているか、チームのコンセプトに合った選手か、侍ジャパンに選ぶにふさわしい選手かなどコーチ陣と話して多角的な角度から決める。
とりわけ、19年のプレミア12で優勝の立役者になった選手たちを大事にしたい思いがある。シーズンが終わって、出場辞退が相次いだ中で体を張ってプレーしてくれた選手に感謝の思いが強い。今回プレミア12の優勝メンバーが14人と24人の中の半分以上選ばれたのも、稲葉さんらしい選考だなと感じました」
情を大事にする指揮官の思いを汲むならば、プレミア12で故障もなく出場辞退した西武・森は早い段階で選考する意思はなかったのかもしれない。
では、巨人・岡本はなぜ選ばれなかったのだろうか。昨年は31本塁打、97打点で2冠王を獲得。今季も19本塁打とリーグトップのヤクルト・村上宗隆を1本差で追いかけ、58打点はリーグトップと球界を代表する主砲として堂々たる数字を残している。
気になるのは好不調の波が激しいことだ。4月は打率2割台前半となかなか調子が上がらず、その後に固め打ちでトップギアに入ったかに見えたが、6月3日の西武戦(東京ドーム)から9日のオリックス戦(京セラ)も20打席連続無安打と沈黙。爆発力は魅力的だが、東京五輪の短期決戦で調子が悪い時期に当たることも考えられる。長丁場のペナントレースと違う難しさがあるのだ。