英国のコーンウォールで開かれていた主要7か国首脳会議(G7サミット)には、韓国の文在寅大統領も招待国首脳として招かれた。現地で日韓首脳会談が開かれることになっていたとする報道をめぐり、波紋が広がっている。
韓国メディアが「日本が一方的に(予定を取り消した)」とする一方で、日本側は「そのような事実は全くない」と完全否定。単に否定するだけではなく、韓国側に抗議するという強い対応に出た。半ばウソつき呼ばわりされた形の韓国メディアだが、この発言をどう報じたのか。
竹島周辺海域での訓練を理由に「日本が一方的に取り消した」と報道
発端は2021年6月14日午前の聯合ニュースの報道だ。韓国外務省当局者の話として、日韓両政府が「略式会談を行うことで暫定的に合意」していたが、韓国軍が島根県の竹島の周辺海域で定例訓練を行うことを理由に、「日本が一方的に取り消した」と報じていた。この記事では、日本側の対応について
「訓練を理由に合意していた首脳会談を取り消したことについては納得できないとの指摘が出そうだ」
「過去から存在してきた問題を理由に首脳間対話をキャンセルすることは非常識な対応と言える」
などと非難している。
日本側は6月14日午後の官房長官会見で反応。加藤勝信官房長官は、聯合ニュースの報道について
「そのような事実は全くない。事実に反するのみならず、一方的な発信は極めて遺憾であり直ちに韓国側に抗議をしたところだ」
などと否定。日韓首脳会談が実現しなかった理由は「スケジュールなどの都合」だとする一方で、
「サミットの場において、ごく短時間、両首脳の間で簡単なあいさつが交わされたと聞いている」
とも説明した。
深読みするハンギョレ新聞、初報を出した聯合ニュースは...
報道を完全否定された側の韓国側は、どう反応したのか。当の聯合ニュースは6月14日午後、東京発で加藤氏の発言を伝えている。その中で、
「日本政府のスポークスマンである加藤長官が韓国外務省当局者の発言に正面から反論することで、今回のG7サミットで日韓会談が開かれなかった問題では、両国間の真実をめぐる攻防が予想される」
などと論評している。
一方で、
「加藤官房長官の発言を注意深く見てみると、韓国側の主張通り、事前に日韓首脳会談の日程が決まっていた可能性も排除することはできないようだ」
とみるのが、左派のハンギョレ新聞だ。
加藤氏が、会談が実現しなかった理由を「スケジュールなどの都合」だと説明し、「ごく短時間、両首脳の間で簡単なあいさつが交わされた」と話したことを根拠に、
「加藤長官の説明通りなら、事前に日韓首脳会談が予定されたが、日程のため実現していないと解釈することもできる」
などと推測している。ハンギョレ新聞の説明では分かりにくいが、事前に会談はセットされたが結局は時間が取れずに「簡単なあいさつ」にとどまった、という趣旨のようだ。
文氏はG7サミット閉幕後の6月14日未明、日韓首脳会談が実現しなかったことについて、フェイスブックに
「菅首相との初対面は、韓日関係で新たなスタートになりうる貴重な時間でしたが、会談につながらなかったことを残念に思う」
と書いている。ただ、会談が実現しなかった経緯については触れていない。
なお、韓国外務省の崔泳杉(チェ・ヨンサム)報道官は6月15日の記者会見で、
「匿名の当局者を引用してメディアが報道した内容について、具体的で細かい内容を公に言及することは、この場では控える」
とした上で、首脳会談が行われなかった原因は日本側にあるとして、暗に日本側を非難した。
「これまで韓国政府は、日韓首脳間の対面について開かれた姿勢で取り組んできた。しかし、結果的に、今回のG7サミット期間中、現地では日韓間の会合が行われなかった」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)