英国のコーンウォールで開かれていた主要7か国首脳会議(G7サミット)は、2021年6月13日(現地時間)、首脳宣言を採択して閉幕した。
宣言には、中国が進める「一帯一路」構想などを念頭に、中国をけん制する文言が多く盛り込まれた。新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港をめぐる問題では、人権や自由を尊重するように求め、東シナ海と南シナ海については「一方的に現状を変更し、緊張を高めようとする試みには強く反対する」と明記した。ただ、中国に対してどの程度強硬姿勢を取るべきかについては参加国の間でも温度差がある。欧米メディアで日本の動向が紹介されることは必ずしも多くなかったが、その中でも日本の立ち位置については、強硬姿勢が裏目にでることを「警戒している」、「最も態度を決めかねている」といった指摘が出ている。
米政府高官「英国、カナダ、フランスがバイデン氏の意見をすぐに支持」
参加国間の温度差を鮮明に伝えているのが、ワシントン・ポストが「バイデン大統領、G7に中国への強硬路線を要請するも、すべての同盟国が熱心なわけではない」と題して6月13日未明(日本時間)に報じた記事だ。
記事では、バイデン氏の対中強硬姿勢について
「中国とは貿易面でのつながりが深く、気候変動対策などでの協力が期待されているが、対中政策はバイデン政権の外交政策の中心的要素になりつつある。しかし、バイデン氏がG7首脳会議で対面している首脳の中には、バイデン氏ほど労働慣行(編注:強制労働を念頭に置いている)について中国政府に働きかけようとしない人もいる」
などと説明した上で、米政府高官の話をもとに、各国の立場の違いに触れた。
米政府高官が、首脳会議で中国への対応について議論された後、記者団に対して、
「中国の行動に対する懸念は同じだが、どのように対応すべきかについては意見の相違がある」
などと述べたという。記事によると、
「(この高官は)英国、カナダ、フランスがバイデン氏の意見をすぐに支持したことを挙げたが、他の国々がどのような立場だったかは、すぐには明らかにならなかった」
という。「他の国々」は、日・独・伊。記事では、ドイツは「中国に年間数百万台の自動車を輸出」しており「中国への強硬姿勢が裏目に出ることを懸念している同盟国のひとつ」だと指摘されており、「隣国で、貿易相手国でもある日本も(裏目に出ることを)警戒している」。イタリアについては、すでに「一帯一路」構想への参加を表明していることを指摘している。
日本は「G7の中で、最も態度を決めかねている(ambivalent)ようだ」
米国務省の海外向け放送局「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)は、6月12日(米東部時間)付けで「バイデン氏の反中政策、G7で賛否割れる」と題した記事を掲載。やはり政府高官の
「G7首脳は、中国の脅威は現実のものだとの認識で一致したが、どの程度積極的に対応すべきかについては意見が分かれた」
とする話を掲載し、独、伊、EUについては
「中国に対して、それほど強硬な態度を取りたくないようだ。むしろ、『協力的な関係』を重視したいようだ」
との見方を紹介。米、英、加、仏については、
「程度の差はあれ、より『行動的』であることを臨んでいる」
とした。残る日本については、次のように触れた。
「日本はG7の中で、最も態度を決めかねている(ambivalent)ようだ」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)