「皆が弱者なのだから皆で支え合うしかない」 枝野幸男・立憲民主党代表に聞く「日本の現実」【J-CAST単独インタビュー】

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政権奪取戦略で本当のこと言う人は「政治家失格」

―― 著書では、政権を取った際の「ビジョン」について語られていますが、有権者にとっては、どのようにして政権を取ってビジョンを実現するかも、ひとつの関心事だと思います。今回の著書では触れていませんでしたね。

枝野: まず、政権を取るための戦略を外で本当のこと言う人は政治家失格です。手の内をさらすなんて、しかも弱い側が、そんなことはあり得ない。もし表に向かって言うとすれば、嘘をついている。自民党をだますための嘘でしかない。それから本ですから、7年というのは少し時間がかかり過ぎましたが、出版社が決まった時点で原稿がほぼ出来上がっていても、2月から実際に3ヶ月かかったわけだから...(編注: 20年12月に枝野氏側が出版社に書籍化を売り込み、21年2月に文芸春秋からの刊行が決まった)。目先の話って本にはしませんよね。そもそも書籍にすること自体が無理なテーマですよね。

―― 「手の内を明かしてはいけない」というのは、枝野代表がよく記者会見でも口にする持論でもあります。ただ、有権者の関心が高い事柄でもあるので、大まかな方向性だけでも、と思ったのですが...。

枝野: だって、1か月後の状況は変わりますよ、この政局は。

―― 著書では、普段の街頭演説や記者会見ではあまり語られない理念や基本的な考え方が示されています。その分、枝野代表や党に対する理解や支持が高まる読者もいそうです。総選挙が近いわけですが、支持率上昇に向けて、著書以外にはどのようなアピールを考えていますか。

枝野: 実は、最大の戦略は「奇をてらわないこと」。今求められているのは、安定と安心です。本来自民党が持っていた、そして自民党に期待されていた安定と安心を、この8年あまり(安倍政権が)ぶっ壊してきて、「むしろこっち(立憲民主党)の方が安定してるじゃん、安心できるじゃん」という構造を作っていきます。その上で、この本は売れたといってもせいぜい2万部で、回し読みしてくれたとしても有権者全体に占める割合はきわめて低い。それでも、(著書で示したような)体系的に網羅的なビジョンを持っていること自体が安心につながるというのが、この本の意味です。奇をてらわずに安心安定、「枝野なら、立憲ならこういうことを言うよね」「それはそうよね、このご時世ね」という理解が広がって、分かる人には「枝野ビジョン」と繋がっていることまで分かる。こういうことだと思うんです。

―― それとなくジワジワと広がっていくという...。

枝野: そういうことなんです。

―― 著書には「立憲民主党の個別政策や総選挙に向けた選挙政策を記したものではない」と断り書きがありますが、立憲民主党が策定中だと思われる政権公約(マニフェスト)は、著書の考え方がベースになり、あまりかけ離れたものは出てこない...と理解してよろしいですか。

枝野: 「ベースにして」という聞かれ方をしてしまうと、(公約は)党としてみんなが考えてまとめ上げるので、先に「結論ありき」みたいになってしまって、私の立場では言ってはいけません。ただ、党で最終的にまとまったものとズレたものを選挙の直前に私が出していたら、そんなことでは選挙にならないわけですから...。党として最終的にアウトプットされるものとズレないという自信があるから出している。むしろこういう整理の仕方が正しいと思うんです。
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