プロ野球・ヤクルトスワローズの黄金期を築いた名捕手・古田敦也さんが、トレードマークである「メガネ」に転生し、平凡な高校生キャッチャーを鍛えるという筋書きのウェブマンガ「古田敦也がメガネに転生した件」がじわじわ話題となってきた。
古田さんをメガネに転生させるという発想の面白さもさることながら、緻密な野球考証も読み応えがある。読者からは「よく古田さんがオッケーを出したな」とも言われた本作のきっかけなどを、原案の楠風夏さん、作画の堂仙こいるさんに聞いた。
きっかけは「メガネデー」?
5月に配信された「古田敦也がメガネに転生した件」は電子書籍配信サイト「めちゃコミック」上のレーベル「コミックBEAN」で連載された全4話のマンガである。作品冒頭で、いきなり古田さんは、ある高校生キャッチャーを一人前の捕手にするという使命を与えられ、野球の神様によってメガネに転生させられてしまう。
平凡な高校生キャッチャーの井手久人のメガネに宿った古田さんは、彼の隠れたセンスに注目し、リードに盗塁阻止と捕手としてのスキルを伝授していくというあらすじだが、その野球描写が精密だ。素早く走者を刺すためのクイックスローの秘訣、打者の心理を読んだリード術など、いかにも古田さんが考えていそうなセオリーで井手がプロ顔負けの名捕手に鍛えられていく。
この奇想天外なストーリー発案のきっかけについて、楠さんは取材にこう話す。
「元々私の知人が古田さんと懇意にされており、古田さんのマンガをいつか制作したいと思っていました。当初は、ノンフィクションなら『古田さんが選ぶベストナイン』、フィクションであれば『古田さんが高校野球部の監督だったら?』といったシンプルな案を検討していました。
企画案を練っている最中に、古田さんが監督をされていた際、メガネをかけて入場するとサービスが受けられる『メガネデー』といった企画をやられていたことを思い出し、『古田さん=メガネ』」...うん、もう転生させちゃえ!となりました」
そして古田さんのマネジメント会社からも快く了解をもらい企画がスタートした。
元広島・石原氏も参考に
一方作画の堂仙さんは野球未経験だったが、観戦は好きでその経験や野球好きの人への取材を野球シーンに役立てた。
「リードの組み立てについては、古田さんの著書(『フルタの方程式』シリーズ)を参考にしました。とはいっても『正解のリード一覧』なんてものが載っているわけはないので、例えば2話における井手vs赤江(野球部のエースで4番打者)であれば『自分が赤江だったらどんなことされたら嫌かな?』と打者目線に立って考えながらリードを決めていました。
キャッチャーミットの実物も買ってみましたが、使ってみようと思ったら予想より大きく重くて、手首が重さに負けたのでまだ実践できていません(笑)」
さらに、元広島の捕手石原慶幸さんを長年観てきたことが役に立った。「キャッチャーという役割全体の描写については、石原さんの写真や動画をスキル描写の参考だけでなく作画資料としても大いに使わせていただきました。石原さんを通じてキャッチャーというポジションの魅力を知っていたことは、本作を描くにあたって大きなアドバンテージになっているのではと思います」と話す。
本作は3話まで無料公開されているが、最終話の4話は購入してのお楽しみとなる。井手の成長ぶりにも注目だが、そもそも古田さんはメガネから人間に戻ることができるのか...?