鬼滅の刃「村田さん」はなぜ愛されるか モブからゲーム参戦の大出世...「人間らしさ」が共感呼ぶ?

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   大人気漫画「鬼滅の刃」には、人間も鬼も数多くのキャラクターが登場し誌面をにぎわせた。竈門炭治郎や鬼舞辻無惨らメインキャラクターの他にもファンに愛されるキャラがいるが、その1人が鬼殺隊士の「村田さん」こと村田だ。このほど、2021年中に発売予定の対戦アクションゲーム「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」にも村田が登場することが5月31日に同ゲーム公式サイトで発表され、ファンは沸いた。

   他の実装キャラクターはといえば、竈門炭治郎・禰豆子らメインキャラや「柱」として卓越した戦闘力を持つ冨岡義勇・胡蝶しのぶ・煉獄杏寿郎、あるいは炭治郎を鍛錬した鱗滝左近次らが居並ぶ。その中でゲーム登場キャラに抜擢された村田は、平隊士としては異例の「出世」をとげている。本編登場時は「モブキャラ」でしかなかった村田さんがここまで愛される理由は何だろうか。

  • 「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」に登場する村田(プレスリリースより)
    「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」に登場する村田(プレスリリースより)
  • 「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」に登場する村田(プレスリリースより)

「サイコロステーキ先輩」とは対照的?

   フルネームすら与えられていない「村田さん」だが、初登場は単行本4巻、那田蜘蛛山での鬼と鬼殺隊の戦いにおいてである。増援として那田蜘蛛山に派遣された炭治郎らが目にしたのは、鬼に手玉に取られて死屍累々の村田ら鬼殺隊。まだ戦えた村田だが、炭治郎らが新参で階級も低いと知ると「なんで柱じゃないんだ!」「何人来ても意味がない」と焦るが、彼らの戦いぶりを見て、格下の鬼を自ら引き付けて炭治郎・我妻善逸・嘴平伊之助の若手隊士をサポートする度量の広さを見せた。

   なおこの「那田蜘蛛山編」では、炭治郎が鬼の累(るい)と対峙しているさなかに突如現れ、「こんなガキの鬼なら俺でも殺れるぜ」など累を小物扱いしたセリフをさんざん口にしたあげく、累に一瞬で身体を切り刻まれて死んだ隊士、通称「サイコロステーキ先輩」も登場する。サイコロステーキ先輩はこのインパクトからかなりの知名度があるが、彼の軽薄な態度とあっけない最期は、対照的な態度の村田の男を上げる効果もあったのではないだろうか。

冨岡義勇と同じ「水の呼吸」の使い手なのに...

   村田の実力はメインキャストの隊士たちに比べれば低く、自ら日輪刀を振るって鬼を倒す描写は乏しい。「全集中の呼吸」も実力が上回る柱の隊士に比べて効果は低く、一応炭治郎や「水柱」の冨岡義勇と同じ「水の呼吸」の使い手であるが、薄くて発動が見えにくい設定を与えられてしまった。かといって薬の知識に富んだ神崎アオイのような特技にも恵まれていない。徹底的に「モブ」なのだが、サイコロステーキ先輩のように任務を軽んじたりはせず、死と隣り合わせの最前線でも愚直に鬼狩りを全うしようとする。

   那田蜘蛛山編の後、村田は最終決戦前の「柱稽古」で再登場し、鬼舞辻無惨との決戦にも加わり、下級の鬼との戦いや負傷者の救護を担当。ここで冨岡義勇とは隊士志願者の「最終選抜」の同期合格だったことが明かされ、瀕死の炭治郎を介抱している。人間ばなれした能力の鬼にあっという間に殺されていく平隊士の中では生存能力は低くはないようだ。また前述のように主人公や柱との接点が多いためにファンが想像を働かせる余地が多い。

かろうじて人間らしい感情と振る舞いを保っていた村田

   超人的な戦いを繰り広げる鬼と隊士に比べると、那田蜘蛛山でも最終決戦でも村田の振る舞いは人間味にあふれている。ピンチには狼狽し、負傷した炭治郎や我妻善逸を助けたいと感情を露わにし、冨岡義勇に名前を呼ばれただけで涙する。善良な性格も読者の共感を得やすいキャラクターだ。

   人でなくなった「鬼」と、自らの生命を省みず鬼狩りに命を燃やす鬼殺隊の戦いが「鬼滅の刃」の物語の軸をなすが、鬼も鬼殺隊も人間らしさを捨てたという点では似通っている。最終決戦で一部の隊士が見せた玉砕さながらの戦いぶりも現代の価値観ではなかなか実践できるものではない。その中でかろうじて人間らしい感情と振る舞いを保っていた村田は、メインキャラクターとは別に読者の共感を得やすい存在だ。

   参戦発表とともに公開された「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」のティザー映像では、村田さんは作中と打って変わって刀を振るって活躍している。マンガ本編では見られなかったが、村田さんも見えないところでこうして鬼を討伐していたかもしれない。彼の貴重なヒーローぶりを楽しめそうだ。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)

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