弥生賞での「事件」
だが、2戦目となった1997年弥生賞で事件が起こる。サイレンススズカはデビュー直後に出たソエで強い調教ができておらず、なんとか皐月賞の出走権を得るために強行気味に弥生賞に出走した。2番人気で迎えたレース、各馬ゲートインとなったところでサイレンススズカがしゃがみ込んでしまい、さらにはゲート下を潜り出てしまったのである。この影響で上村騎手は足を痛めてしまった。
なんとか馬体検査を受けて出走は可能となったが8番枠から大外発走になってしまう。上村騎手は無理を押してそのまま騎乗。だが、結局ゲートが開いた直後にサイレンススズカは暴れてしまい大きな出遅れ。それでも追いかけて4コーナーでは3番手まで上がるという脚を見せるのだが結果8着と完敗してしまったのである。
その後、プリンシパルSは勝利するも、ダービーは9着に終わる。
一度ゲートを潜ったことで気性の心配をされたサイレンススズカにメンコ(覆面)がついたのは、ダービーの大歓声で興奮させないために耳を覆うためである。ウマ娘でのスズカは緑の耳をピョコピョコかわいく動かしているが、これを見るたび、「景色に集中させたい」とでも言えるような当時の厩舎関係者による懸命な歩み寄り、寄り添ってきた努力の形が思い出される。
ダービー完敗後、上村騎手は「いろいろなことを求めすぎた結果、とうとう精神的にキレてしまったんです」というコメントを残している。ウマ娘でのスズカならば会話ができるので気持ちを汲むことができるが、史実のスズカは当然話せない。気持ちを汲み取るのは相当大変だっただろう。