全日空(ANA)がハワイ線向けに導入した超大型旅客機のエアバスA380型機が、1年4か月ぶりに再登板だ。ANAが2021年6月1日に発表した国際線の路線・便数計画で明らかになった。
ANAでは元々21年8月に成田-ホノルル線を2往復させることにしていたが、使用するする飛行機を246人乗りのボーイング787-9型機から520人乗りのA380に大型化することにした。
米ハワイ州では、訪問者に義務づけている10日間の自主隔離の緩和を進めている。日本からの訪問者についても、事前に医療機関で陰性証明書を取得すれば自主隔離の対象外だ。ただ、帰国後は引き続き14日の自己隔離が必要で、ハワイ旅行のハードルは引き続き高い。それでも需要が伸びつつあるのはなぜなのか。
ワクチン接種拡大で「夏休みの需要が増加」
A380は総2階建て。ANAのA380には、ハワイでは神聖な生き物だと考えられているウミガメのハワイ語の愛称「ホヌ」にちなんで、「空飛ぶウミガメ」の意味を持つ「FLYING HONU」(フライングホヌ)という愛称がついている。
ANAはA380を3機発注し、そのうち2機が就航している。19年5月に運航を始めたが、20年3月25日にホノルルから成田に戻った便を最後にホノルル線では運航されていない。乗客の前にお目見えするのは、遊覧飛行や機内で機内食を食べるイベントなどに限られていた。
ANAの発表によると、8月9日と13日に成田空港を出発する便と、その折り返し便がA380で運航される。この需要増の背景にあるのは、ワクチン接種とA380という機体そのものに対する期待感だ。ANA広報部は、次のようにコメントした。
「直近でのワクチン接種の拡大とスピードアップが図られている状況に沿って、夏休みの需要が増加している状況です。こうした需要がさらに拡大することを期待し、また遊覧チャーターなどを通して、多くのお客様から『A380で旅行したい』というお声を頂戴していることを鑑み、今回A380でのホノルル便運航を判断いたしました」
想定される客層については
「一定程度の駐在員や留学生といった流動もあると考えておりますが、ハワイ州の到着後隔離免除施策が開始したことを受け、レジャー層の予約が足元の便においては少しずつ増加傾向にあり、そういった需要がさらに拡大すると期待しております」
と説明。観光需要の回復に期待を寄せた。
ZIPAIRは駐在員など念頭に「年に何度も行き来する方に新たな選択肢」
日本航空(JAL)傘下の中長距離格安航空会社(LCC)のZIPAIR(ジップエア)も、ホノルル線の需要回復を見越して、7月21日(成田発)から10月28日(ホノルル発)にかけて、週1往復させる。ただ、想定している需要はANAと若干異なるようだ。
ZIPAIRがホノルル便を運航するのは、20年12月~21年1月にかけて臨時便を13往復させて以来、約半年ぶり。前回は貨物需要が見込める日を中心に運航日を設定しており、今回も貨物需要がホノルル便運航のひとつの理由になっている。
ZIPAIRによると、臨時便の運航が終わった2月以降も運航の要望が多く寄せられたといい、運航を決めた理由として(1)引き続き東南アジア・日本=米国間の貨物需要が高い(2)コロナ禍でも潜在的な生活需要や留学に伴う渡航需要があり、多様なお客さまにお求めやすい価格帯での選択肢を提供する意義がある(3)両国のワクチン接種が進んでおり、秋ごろにはかなり状況が改善すると期待される、という3点を挙げた。
想定される客層については
「留学生や駐在員の一時帰国や家族の訪問、ハワイにも居宅がある方など、年に何度も行き来する方に新たな選択肢としてお選びいただきたいと考えています」
と説明。観光客以外の層に、比較的安価に乗れるLCCという選択肢を提供したい考えだ。
ハワイ州観光局のまとめによると、19年~20年2月までは、ハワイを訪れる人の数は過去最高水準だったが、20年3月以降はコロナ禍で激減している。具体的には、19年4月にハワイを訪れた人は84万9397人いたが、20年4月には4564人に。それが21年4月には48万4071人まで回復した。「コロナ前」の19年4月と比べて57.0%の水準だ。
地域別に「19年4月→20年4月→21年4月」の推移を見ると、米本土から来る人は「54万8058人→4245人→47万1336人」。コロナ前の86.0%の水準にまで回復している。対して日本から来る人の推移は「11万9492人→13人→1367人」。コロナ前の1.1%に過ぎない。米国内の移動はかなり回復しているのに対して、国境を越えた往来は依然として厳しい状態が続いている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)