「100日後に食われるブタ」という動画チャンネルがYouTubeで注目を集めつつある。可愛らしいブタを飼う様子が毎日投稿されているが、本当に食べてしまうのか、現在のほのぼのとした動画風景とのギャップで気になるネットユーザーが少しずつ増えている。
「飼い主」とこの企画の発案者は取材に対し、ブタの運命については逡巡(しゅんじゅん)しつつも、フードロスなどの食をめぐる問題に目を向けてほしいと訴える。
「もっと炎上するかと思っていました」
YouTubeチャンネル「100日後に食われるブタ」で動画が初投稿されたのは2021年5月25日。「初めて家に来た、生後75日のミニブタがかわいすぎる」というタイトルで子ブタを飼う様子が投稿されている。子ブタの名前は「カルビ」(通称:カル様)で、毎日様々な仕草を投稿している。一見ほのぼのとしたペット動画にしか見えないが、コメント欄ではその是非をめぐり議論が交わされている。ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者の「ひろゆき」こと西村博之氏に紹介されるなど、注目度が高まっている。
このチャンネルは個人ではなく複数人で運営されていた。運営主である動画編集や教育などの事業を行っている会社社長S氏と、ブタの飼い主が取材に答えた。飼い主はS氏の企業が主催している動画編集で収益を得る講座の参加者の1人だった。
YouTubeで「バズる」動画の企画を考えていたが、既に犬や猫のペット動画は飽和状態。そこで差別化しつつ、メッセージ性のある内容を視聴者に伝えられるものとしてこの企画が浮上したそうだ。タイトルは人気を呼んだ「100日後に死ぬワニ」の影響もあったという。
S氏は、
「可愛いブタを通じて日本にもあるフードロスや、そのために家畜の命が無駄にされていることを知ってほしいと思います」
と話す。飼い主も「日本では廃棄される食品量は年平均3000万トン(※)にもなるそうです。私たちが知らないうちにこれだけの食料と動物の命が無駄になっている現状に、行政や企業もフードロス減の取り組みを始めていますし、この問題を身近に感じてもらえればと」と語る。※2018年度の食品廃棄物等の発生量は約2531万トン。うち、本来食べられるにもかかわらず捨てられている食品ロスの量は約600万トン(環境省・農水省調べ)。
動画の評価欄は高評価と低評価がどの動画も5:1~2:1ほどで推移している。「もっと炎上するかと思っていました」(S氏)とのことで、チャンネル登録者数も順調に増えており、「伸び率も高いですし、50万人、100万人の登録者を目指せる伸びしろはあります」と前向きだ。