外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(40)哲学者スラヴォイ・ジジェク氏と考えるパンデミックの意味

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環境危機

   次の質問は、環境危機についてだった。最近の著書、とりわけ「パンデミック2」では、気候変動など環境危機への言及が目立つ。ジジェク氏に、コロナ禍で生じた変化についてうかがおうと思った。彼はこの間、コロナ後の生態学的な危機について、より悲観的になったという。

「このパンデミックは、ロックダウンが終われば正常に戻り、元の日常が戻るだろうか。いや、コロナが終わっても、ほかの生態学的危機はやってくる。コロナ禍は、人間と自然との関係が不安定化したことを示す第1幕であり、その後にはもっと長く続く危機がやってくる、と思うようになった」

   ジジェク氏は、ワクチンが行き渡っても、あるレベルの危機を克服できるだけで、万事解決とはならないだろう、という。

「振り返ってほしい。1年前、すべてのメディアは口をそろえ、『2週間ロックダウンをすれば終わる』といった。昨夏には『2か月のロックダウンで終わる』といった。冬になると、今度は『半年のロックダウンで終わる』と言い始めた。ワクチンが登場しても、いずれは効かない変異株が出てくる。今は『2023年、あるいは24年ごろには終わる』と言い始めている」

   異常気象による災害は、欧州でも激発している。だがジジェク氏は、自然災害だけでなく、人間の営みが生態を脅かすような別の破局もあり得るという。

「私の友人は2011年の福島第一原発の事故後に、EU代表の一人として訪日した。彼の話によると、日本政府は事故直後の一時期、首都圏の3千万人を避難するシナリオを検討し、パニックに陥った、という。かつてであれば、戦争でしか起きなかったような破局が、今後はあり得る、ということだろう」

   ジジェク氏は、だからこそ、「コミュニズム」が必要なのだという。もっとも彼のいう「コミュニズム」は共産党が一党支配するような旧ソ連型の共産主義のことではない。

「私がいうコミュニズムとは、国際協調、国際的な連帯を指す。ユニバーサルな保健・医療・ケアに優先順位を置く経済的な国際連携や協力を強めることだ。これは私のユートピアではなく、地球規模の緊急対応に必須の国際連帯だ」
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