「YESが0の人は『人罪』」小学校だよりが物議 書いた校長「7つの大事なことを伝えただけ」

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   北海道内のある町立小学校の学校だよりに、広く出回っている社員教育ポスターに書かれたものと同じ指標を、教員や児童に当てはめるような内容が掲載され、ツイッターで疑問の声も出ている。

   同校の校長が教育研修で聞いたことに基づいて書いたようだが、研修の講師は、「子供たちにも適用するのは、本意でない」と話す。校長は、「一般的なこととして感じたことを書いただけです」などと説明している。

  • 「社員教育」を学校現場に当てはめたが…(写真はイメージ)
    「社員教育」を学校現場に当てはめたが…(写真はイメージ)
  • 「社員教育」を学校現場に当てはめたが…(写真はイメージ)

「YESが7の人は『人財』であり、会社が求めているよい『じんざい』」

   「人財になるための7つの条件」。同校の学校だよりでは2021年5月28日、こんなタイトルを付けて、校長名の文を載せた。人財とは、財産になる人材という意味で使っているらしい。

   それによると、校長は、道立教育研究所の学校経営力向上研修に参加し、7つの条件について講義を受けた。条件とは、「明るく、元気な挨拶ができる」「言われなくても、自分で考え、行動できる」「人が嫌がることでも、進んで取り組める」などだ。

   これに基づいて、校長は、「いくつクリアできているか」を教職員に提示したという。それは、次のような内容だった。

「YESが7の人は『人財』であり、会社が求めているよい『じんざい』であり、自分で考えて成果をあげられる人だそうです。YES が4~6の人は『人材』であり、会社が求めているふつうの『じんざい』であり、言われたことなら、自分でやりきれる人だそうです。 残念ながら、YESが1~3の人は『人在』、YESが0の人は『人罪』となるそうです」

   条件は、社会人の指標だったが、校長は、「本校児童の状況を確認します」といい、例えば、「明るく、元気な挨拶」は二極化しており、教職員や保護者が適切な対応をすれば改善できるとした。そして、子供たちを「人財」に近づけるには、身近な大人の存在が重要だと述べた。「7つの条件の備わっている子どもの多い学級は軌道に乗っている」とも書いている。

校長を研修した講師「子供に使われたとすれば、本意ではなく、違う」

   学校だよりの内容は、6月1日になって、会社が求める資質で教職員や児童をランク付けするショッキングなものだとツイッターで指摘され、波紋が広がった。

   この投稿は、3000件以上もリツイートされており、様々な意見が寄せられている。

   批判的な声は多く、「人罪か、、、教育に関わる人が使う言葉としてひどすぎる」「会社、社会、体制に従順な人材を欲しているんでしょうか」といった反応が出ている。

   一方で、「この社会で生きていく以上、使える、使えないとか生産性とか嫌でもつきまとう」「教師は一般企業で働いたことがない、社会を知らない、となじり続けた結果では?」と一定の理解を示す声もあった。

   校長が受けたのは、道立教育研究所が4月28日にオンラインで行った研修ではないかとみられている。この研修では、道商工会議所連合会の福井邦幸政策企画部長が「組織を活性化させるマネジメントと人材育成」と題して講義していた。

   福井氏は6月3日、J-CASTニュースの取材に対し、知り合いの研修講師から借りた資料を使って、7つの条件について校長らにレクチャーしたことを認めた。

「この条件は、本などいろんなところに出ており、校長はどうあったら資質が向上するかを話すときに、1つの指標として使いました。学校経営で、教頭以下の組織マネジメントをどうするかということです。『人罪』は、極端の例としてあるだけで、そのまま人に使うのはダメですね。著作権の問題がありますので、受講者にペーパーを渡しておらず、スクリーンの画面で見せました」

   校長が条件を子供たちに当てはめたことについては、こう話す。

「子供に使うとは一切話しておらず、使うものではありません。そういうふうに使われたとすれば、本意ではなく、違うのではないかと思います。条件は、経営者の心構えを説いたもので、人に使うべきではなく、自分に当てはめてほしかったですね」

7つの条件を考えた会社「人罪は、個人を陥れる内容ではない」

   7つの条件については、社員教育の教材を手がける会社「モチベーション・アップ」のポスター内容だとツイッター上で指摘があり、同社の担当者も6月3日、自社オリジナルの指標であると取材に答えた。公式サイトでは、全国で8万社以上がこの社員教育ポスターを活用中だとしている。

   この内容を学校教育の現場で適用できるかについては、こう話した。

「塾が講師に対して使っていることはありますが、学校に使うというのは、あまりお聞きしないですね。業種を特に絞っていませんので、仕事をするうえで基本的なことを書いていますが、仕事以外にも生かせるならうれしいです」

   7つの条件を社員の評価に使う会社もあるとしたが、それは一部だとした。

   人罪といった表現については、こう説明した。

「自分を高めるためのものであり、個人を陥れる内容ではありません。特段の技術は必要なく、誰でもできる内容ですので、いい仕事をするために、やるかやらないかの話です。ですので、特に問題視はしていません」

   同社の名前を出さずに7つの条件を使うことについては、こう言う。

「複製や似たような商品は困りますので、それ相応の対応はします。ただ、社内などで使う分には構わないです。今回のことについては、状況が分かりませんので、お答えしかねます」

校長は、教職員や児童の評価付け「一切やっていない」

   学校だよりを出した町立小学校の校長は6月3日、取材に対して、7つの条件を4月28日のオンライン講義で聞いたのかや講師が子供に使ったことは本意でないとしたことについて、「相手方のこともありますので、コメントを差し控えたいと思います」と話した。

   この条件を使って、教職員や児童の評価を付けたかについては、「一切やっていないです」と否定した。

   子供にも当てはめたことについては、「明るく元気なあいさつは大事なことだと思って提示しました。学校だよりは、一般的なこととして感じたことを書いただけです」と説明した。

   人罪という表現を使ったことについては、「それについての意見は何も書いておらず、7つの大事なことを伝えただけです」とした。

   学校だよりは、同校の公式サイトに載っているが、今後も載せ続けるかどうかについても、コメントを控えたいとしている。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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