市川海老蔵さん(43)の新作歌舞伎「KABUKU」で、コロナ禍に絡めて中国人を揶揄していたなどとして、ツイッター上で疑問の声も出て、論議になっている。
制作した松竹は、意図と異なる捉え方をされたとして、内容の一部を変更したうえで、上演を続けることを明らかにした。海老蔵さんはブログで、「新しい挑戦は賛否ある」といった内容でその意図を説明している。
音声SNS「Clubhouse」で様々な意見や視点を取り入れて構想
KABUKUは、江戸時代の末期に民衆の間で流行した集団乱舞「ええじゃないか」を舞台に、新聞の瓦版売りがお伊勢参りのお札を利用して儲けたことから巻き起こる騒動を現代の東京・渋谷と重ね合わせて描いた。原作は、「金田一少年の事件簿」で知られる人気漫画原作者の樹林伸さん(58)で、海老蔵さんらが演出を担当した。
海老蔵さんが中心となって、音声SNS「Clubhouse」で、幻冬舎編集者の箕輪厚介さん(35)らの著名人から、様々な意見や視点を取り入れながら構想したそうだ。
「海老蔵歌舞伎」の演目の1つで、公演は、時代物の名作「実盛(さねもり)物語」とともに、2021年5月29、30日に東京都中央区内の明治座で行われた。
そして、30日になって、KABUKUの演出にツイッターで疑問の声が散見されるようになった。ある投稿は、3000件以上もリツイートされるほど反響を呼んでいる。
それによると、公演では、白人や日本人などに扮した人物が、中国人を演じた人物に対し、衛生面に気を付けずに何でも食べたためにコロナに感染し、爆買いを通じて感染を広めたと台詞を言うシーンがあったという。これに対し、中国人役は、お金をたくさん出したのだから我々に感謝するべきだといった内容を話したとしている。
ツイッター上では、様々な意見が寄せられて、論議になっている。
「一部本来の演出意図と異なる捉え方を招く箇所がございました」
KABUKUの演出に疑問や批判は多く、「品性を疑います」「誰も止めなかったの?」といった声が相次いだ。一方で、「差別を誘発する意図は感じられない」「歌舞伎に道徳を求めたら野暮だわ」と擁護する向きもあり、賛否両論になっている。
指摘された演出について、制作を担当した松竹では、広報室が6月3日までに、「ツイッターなどに投稿された公演内容については、概ね、事実に反するものではないと認識しております」と認めた。
KABUKU は、6月4~13日まで京都市内の南座でも上演される予定だが、内容を一部変更することを明らかにした。
「該当する場面は、世界共通、時空も関係ない設定の地獄の果ての閻魔の庁。時代も国も異なる人々が地獄におちてまでも、自己中心的にそれぞれの主張を繰り広げ、他者を受け入れようとしないでお互いに争い続けることを描いています。異なる価値観を認め、多様性を尊重するという趣旨のことを風刺的に描こうとした演出意図でしたが、一部本来の演出意図と異なる捉え方を招く箇所がございましたので4日の南座公演初日に向けて、一部内容を変更して上演予定です」
そして、「南座公演に向けてより良い舞台づくりに努めてまいります。今後とも変わらぬご厚誼をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます」としている。
「何もしない事がとても良い選択なのか?私はそうは思いません」
演出への意見を意識してか、海老蔵さんは5月31日、「古典と新しい挑戦!」と題してブログを更新し、自らの意図を説明した。
「新しい挑戦は、新しい挑戦ですから、賛否分かれて欲しいが前提」「新しいものには拒否反応を示すの傾向強い日本において現時点でも新しい事はリスクと捉えがち」(原文ママ)としたうえで、次のように言い切った。
「しかし どうなのかは、正直誰にもわからない事、わからないから、怖いからリスクがあるからと言って何もしない事がとても良い選択なのか?私はそうは思いません」
そして、次のように、締めくくっている。
「歌舞伎は現在は古典でありますが 歌舞伎が生まれた当初の傾く精神、かぶく心を忘れてはならない 戦後の歌舞伎のみでは歌舞伎の歴史の1ページ、私はそう思います」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)