「ブロマンス」と呼ばれる分野の配信ドラマの人気が、中国で急上昇している。「ブラザー」と「ロマンス」の造語で、男性同士の友情を描く内容だ。
中国共産党系のメディアも相次いで人気ぶりを伝えているが、仮にコアなファン以外への広がりを見せれば「若者の価値判断や自己形成に重大な悪影響を与える」などと警戒を隠さない。人気コンテンツの規制をめぐる攻防が展開されることになりそうだ。
「耽美」が「男性による同性愛を表現する言葉」として用いられるように
ブロマンス作品では、19年に中国の動画サイト「テンセントビデオ」で配信され、ボーイズラブ(BL)小説「魔道祖師」が原作の「陳情令」などが有名だ。中国共産党の雑誌「半月談」は 21年3月16日付でブロマンス作品について特集。その内容は環球時報や人民日報といった中国を代表する新聞のウェブサイトにも配信された。「ブロマンス」は、中国語では「耽美」と呼ばれる。記事では、その経緯を
「『耽美』は、20世紀の1920~30年代に日本で生まれた言葉で、元々は『美しさにふける』という意味だったが(編注:広辞苑第7版によると「美にふけり楽しむこと」)、後に中国では男性による同性愛を表現する言葉として用いられるようになった」
などと解説している。小説からドラマ化されて人気が出ることが多く、ドラマ化の権利が最高で4000万元(約6億8000万円)で売れた作品もある。ドラマ化が進んでいるのは60作以上にのぼるという。人気の背景には(1)増加する女性視聴者のうけがいい(2)原作ファンの購買力の大きさ、があるとみている。
記事では、男性同士の恋愛を描くBLに代表される「腐文化」を売ることはエンタメ業界では一般的になりつつあるとする一方で、
「このようなサブカルチャーは、内輪では無害かもしれない。だが、それが大規模にテレビドラマ化され、サブカルチャーを超えて大衆娯楽の領域に入ってくると、その弊害、特に、まだ世間に出ていない若い人たちに悪影響を与えないように注意する必要がある」
と警戒している。
「偏見に満ちた不健全なジェンダー概念や、非科学的で間違った生物学的知識」
4月7日付の共産党系の「光明日報」では、具体的な当局の規制も求めた。ブロマンスドラマの視聴者は女性が60%~90%を占め、人気の背景を「女性の感情や美意識、恋愛の願望に合っている」と分析。ただ、小説がドラマ化されて広く視聴されることになることには否定的だ。
「原作や『腐女文化』の中には、エロティックで暴力的な内容、偏見に満ちた不健全なジェンダー概念や、非科学的で間違った生物学的知識が含まれている。このような内容を放置しておくと、視聴者、特に若者の価値判断や自己形成に重大な悪影響を与えることになる」
その上で、「関連する規制当局、さらには社会全体が注意を払う必要がある」と指摘した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)