「そこに、愛はあるんか?」
テレビを見ていて、こんな「問い」を突き付けられたことはないだろうか。消費者金融大手・アイフル(京都市)が放映するCMシリーズ「凛とした女将」で、俳優の大地真央さん演じる「女将」が発するフレーズだ。近年は女将が様々な職業に変身することでも知られるが、「愛」を問いかけるテーマ設定は変わらない。
なぜ、おかみは「愛」を問い続けるのだろうか。アイフルの広報担当者に理由を聞いた。
当初は「料亭」舞台だった
アイフルのCM「凜とした女将」は2018年4月から放映を開始。第1弾「試食」篇では、料亭で板長として働く今野(俳優・今野浩喜さん)が、作った料理を女将に試食してもらおうとするシーンが描かれた。今野は味への自信を語ろうとするも、女将はそれを遮る形で「あんた、ここに愛はあるんか?信じられる愛はあるんか?」と問う。未熟さを思い知った今野が料理の「やり直し」を求められたところで、CMは終わる。
それまでのアイフルのCMといえば、バナナマン(日村勇紀さん、設楽統さん)らお笑い芸人が出演する、コミカルな内容だった。料亭を舞台にした硬派なストーリーへの転換は、視聴者にインパクトを与えたようだ。ユーチューブに投稿された「試食」篇の再生数は150万回を超える。
CMで印象的なのは、大地さん演じる女将の「愛はあるんか?」というフレーズだ。このフレーズが生まれた背景について、担当者は次のように語る。
「"アイフル"の"アイ"、そこから"愛"というキーワードへ。"愛"は人が生きていく上でとても大切で、あえて今の時代に世の中に発信する言葉としても面白い事から『愛がいちばん。アイフル』というキャッチフレーズを(CM制作会社から)ご提案頂きました。アイフルとしても同業他社とは一線を画す言葉、メッセージであること、この業種だからこそ愛を大切にしたいという思いもあり、このキャッチフレーズを採用させて頂きました」
コスプレイヤー、バーチャルアイドル...多様なキャラに「変身」
その後も料亭を舞台にした「庭掃除」篇や「結婚式」篇で、女将は愛を問い続けてきた。しかし、19年放映開始の「車掌」篇で、テイストが一変する。なんと、女将が電車の車掌に転身したのだ。女将はスマートフォンに夢中でお年寄りに席を譲らない今野に「そこに愛はあるんか?」と車内アナウンスで問う。今野は困惑しつつも、最終的に席を譲る。
その後のCMでも女将は「コスプレイヤー」「フランス映画のヒロイン」「アーティスティックスイミングの選手」などに転身。「飲食配達員」「バーチャルアイドル」といった、時代を感じさせる職業も登場した。
女将の変身対象は、CM制作会社との話し合いで決定している、と担当者は話す。「アイフルとしても次はこれが来るんじゃないかな?と予想していたりするのですが、(制作会社の担当者には)いつもその上をいくご提案を頂けるので、我々もいつも楽しみにしています」
いろいろな役柄を演じる大地さんも、楽しみながらCMに向き合っているという。
「(大地さんは)設定、役柄に関してもディスカッション頂いておりますし、単なる CM 出演ではない、真剣な思いをアイフルもいつも感じております。出演者・制作者の視聴者のみなさんに楽しんで頂こうという真剣な思いも視聴者のみなさんに伝わっているのかな、と感じております」
ツイッター上では、CMの新作が放映されると「変身が驚かされるし笑える」「次どうなるんか楽しみになってきた」といった声が集まる。担当者は「沢山の方々に好意をもって受け止めて頂いて、いじって頂いていると感じています。大変嬉しく思っています」と喜びを語る。
メッセージは「ころころと変えるべきではない」
5月10日からは新作「ポスター」篇の放映が始まった。野球少年になった今野が町を歩いていると、選挙掲示板に遭遇。すると「そこに愛はあるんか?」をキャッチフレーズに掲げ、「お馴染みの女将議員候補」として出馬したおかみさんのポスターが貼られていた。これには今野も「またえらいことになっとるがな」と呆れるしかなかった。
前々作の「CG女将」篇では、バーチャルアイドルに扮していたおかみさん。おかみさんの「実体」が見えない中、「CG女将」のボイスだけが聞こえてくる状況だった。だが、今作ではついに「声」すら聞こえなくなってしまった。
女将の変身とともに、変化を続けてきたアイフルのCM。変わらないことが一つある。「愛」を問い続けていることだ。アイフルの担当者は、こんな思いを口にする。
「発信すべきメッセージは一貫して、ころころと変えるべきではないと考えています。伝えたいことは基本的には変わりません。『そこに愛はあるんか?』と、問い続けたいと思います。またこの言葉があるかぎり、女将さんが何をやってもアイフルのCMです」
「ただのはっちゃけた企画ではなく、真面目でありつつ楽しんで頂けるようなバランスに気を付けて今後のシリーズも制作していきたいと考えています。これからも、『そう来たか!』と思ってもらえるような女将さんをお待ちください!」