「格好いい」を追求し続けるウマ娘
このように、挑戦と波乱万丈な生涯を過ごした史実のウオッカ。一方で、ウマ娘でのウオッカは「格好いい」を追求するキャラクターとして他とは異彩を放っている。
育成を開始するとまず「日本ダービーに憧れを抱くウオッカ」のイベントが発生する。父・タニノギムレットがダービーを勝っており、紹介したとおりオーナーも当初からダービーの登録料を払っているなど、幼くしてダービーを意識していた部分が存分にストーリーに取り込まれているのである。
そして育成を進めていくと、チューリップ賞後にオークスか、ダービーかを悩むウオッカの姿がある。ダイワスカーレットとの対決のためにオークスを走るか、ダービーへの夢を叶えるためにダービーを走るか。
両立させることができないなかで最終的に「トレーナーも一緒に考えてくれ」と言うウオッカ。史実で最終的に角居調教師が決断したと言われている部分がうまく取り込まれている。
さらに桜花賞後、悩むウオッカにナリタブライアンがアドバイスをするシーンが登場する。もちろんこの二人は史実では時代が違うので創作ではあるが、ナリタブライアンはウオッカに多くのアドバイスをせず、一言「本能のまま進め。今さら普通のウマ娘のフリをするな」という格好いいセリフを吐いてその場を去るのである。
格好いいに憧れを持つウオッカ、それを言われて「道なき道を征く」決意が固まるのは自然の流れだった。そして最後のひと押しは、トレーナーと相談した際にトレーナーが言う「カッコいいって何だろうな」のセリフだ。悩みを完全に吹っ切ったウオッカはダービーに向かう。ウマ娘は競馬シミュレーションではないからこそできる、史実と創作のクロスが非常に心に刺さるシーンの一つだろう。そして、史実の説明でも紹介したウオッカの挑戦はウマ娘の中でもふんだんに盛り込まれている。ダービー後に記者会見で世界挑戦すると言い、それを実行するウオッカ。そして世界へ旅立つ直前に脚をグキッと捻り取りやめるのは、凱旋門賞へ挑戦するために向かう直前に蹄球炎で回避したエピソードである。