新型コロナウイルス感染者が出た自治医科大学(栃木県下野市)で、学生寮の自室で待機している学生が支給される食事に注文を付けたところ、寮を担当する教授が学生への暴言ととれる言葉を含むメールを全学生あてに送っていたことが分かった。
同大は、全寮制になっており、コロナに対応する「新生活の指針」に反した学生25人に勧告して全員が退寮したことも分かった。学生に厳しすぎるとツイッターなどで疑問が出ているが、大学側は、「医師になる学生に自覚を持ってほしい」などと趣旨を説明している。
「牛乳とヨーグルトがほしい」と支給食に注文を付けると...
「牛乳とヨーグルトがほしい」。暴言メールのきっかけは、学生が支給食に対し、学生課にこのような内容で電話したことだった。
自治医大では2021年5月17日、医学部生5人がコロナに感染したと発表し、700人超いる学生は、クラスター発生のため、同29日まで2週間の自室待機となった。
同大の学事課に28日、J-CASTニュースが聞いたところでは、男子15分、女子30分のグループ入浴や支給食の受け取り時以外は、原則として自室から出られない。食べ物の買い出しはできず、1日分の支給食は、弁当1つとカップ麺1つ、パン複数個、おにぎり2つ、ゼリー、ペットボトルのお茶だ。
これに対し、学生が先のような注文を付けたところ、寮担当の教授が16日、次のようなメールを流した。
「病気によりこのような物を摂取する必要があるのであれば、その旨改めて連絡しなさい。そうでなければ、自治医大を退学して幼稚園へ行くことを強く勧めます」
この件を取り上げた日本テレビ系「NEWS ZERO」が27日に報じたところでは、教授は、同局の取材に対し、医師に必要なプロの見識を学生に教えており、「ここまで言わないと分からないのが結構いる」として、行き過ぎだとは思わないと話した。
厳しい寮の指針に違反して、学生25人が退寮させられる
しかし、ツイッター上などでは、教授の行為について、「こんなメールが飛んでくるの怖すぎ」「とても良い医者を育てる環境とは思えん」などと疑問や批判も次々に出ている。
また、自室待機期間以外でも、コロナに対応する「新生活の指針」が厳しすぎるとの声も上がっている。この指針では、入浴での私語禁止、他の部屋への立ち入り禁止などのほか、学外でも、旅行禁止、外食不可でテイクアウトのみ、カラオケ・パチンコ店禁止、自宅以外の個人宅への立ち入り禁止なども定めている。これに対し、ツイッター上で、指針に反して多くの学生が退寮させられたとの不満も出ていた。
一方、自治医大は、卒業後に9年間へき地医療などに携わることを条件に学費を免除していることから、ツイッターでは「学生寮のストレスに負けるようでは、僻地での住み込み生活にはとても耐えられない」との指摘もあった。
前出の同大学事課は5月28日、教授の行為について「一般的には、行き過ぎたことに思われたかもしれませんが、教員と学生の信頼関係で発言したことだと考えています」と、J-CASTニュースの取材に答えた。
人権侵害やパワハラに当たらないかについては、コメントを避けたいとした。
支給食については、学生食堂で作っている弁当を提供し、ハムやレタスなどが入ったランチパックもあるとして、栄養バランスは考えていると説明した。このほか、医学部の同窓会や卒業生の有志などから、食べ物の差し入れもあると付け加えた。
自室待機期間が終われば、新生活の指針に基づいた生活に戻るが、学事課では、厳しすぎるとの声に対し、次のように理解を求めた。
「寮生活ですので、感染者が出ますと、爆発的に増えることが予想されます。また、病棟実習の授業があり、医療スタッフや患者に感染しますと、病院の機能が止まってしまいます。病院に迷惑をかけますので、少し厳しくしており、医師になる学生としての自覚を持ってほしいと思っています」
指針のどこかに違反したとして、これまでに学生25人が退寮勧告を受け、その全員が退寮したことも明らかにした。退寮者のほとんどが大学近くに部屋を借りているといい、6か月が経って生活態度に問題がなければ再び入寮できるという。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)