国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長の「犠牲」発言が波紋を広げている。
バッハ会長は2021年5月22日に行われた国際ホッケー連盟のオンライン総会にビデオメッセージを寄せ、ビデオ内での発言に対して日本国内から批判の声が上がっている。
バッハ発言にネットでは「誰のためのオリンピック?」
バッハ会長の発言内容を報じたのはインドのPTI通信だ。PTI通信の報道によると、バッハ会長は「東京大会を実現するために、我々はいくつかの犠牲を払わなければならない。選手は夢を間違いなく叶えることができる」と話したという。
PTI通信の報道を引用する形でバッハ会長の発言を日本のメディアが報じたところ、インターネット上で批判の声が殺到した。バッハ会長が発言した「我々」のなかには日本国民が含まれるとし、「犠牲」の文言に批判が集中している。
インターネット上ではニュースのコメント欄にも「オリンピックのために私たちが犠牲になるの?」「IOCの収益のために日本国民が犠牲を払うということなのか」「誰のためのオリンピック?私たちが犠牲を払ってまでやる必要あるのか」などの声が上がった。
新型コロナウイルスのワクチン接種など解決すべき問題が山積し、五輪開催へ逆風が吹き荒れるなかでのIOCトップの「犠牲」発言。スポーツ紙などの報道によると、IOCの広報担当者は24日、バッハ会長が「我々」としたものは「日本国民にではなく、五輪関係者、五輪運動に向けた発言」と説明したという。
東国原氏「いよいよ正体が見えて来た感じだ」
早急にIOC広報が「火消」に走るも、国民感情を逆なでするような発言にインターネット上では怒りの声が収まる気配がみられない。
バッハ会長の発言に対して批判の声が強まった要因のひとつとして、IOCのジョン・コーツ調整委員長の発言があるだろう。コーツ調整委員長は21日に緊急事態宣言下でも五輪は行われると明言。この発言が波紋を広げ、五輪開催に強行的な姿勢を見せるIOCへの反発の声が強まった。
五輪開催まであと2カ月に迫り、IOC幹部が相次いで開催に向けての意志を表示した。これまでの発言とは異なり、今回の発言にはより強い、明確な意思がみてとれた。
IOC幹部の一連の発言に対して、タレントで政治評論家の東国原英夫氏は23日、自身のツイッターを更新し、「ここのところのIOCのバッハ会長やコーツ氏の数々の発言。国民感情を逆撫でする。いよいよ正体が見えて来た感じだ」と投稿した。
米国陸上チームは事前合宿をキャンセル
五輪開催への逆風が強まるなか、新たな懸念材料が出てきた。国内メディアの報道によると、米国務省は24日、新型コロナウイルスの感染状況を受けた各国の渡航情報を見直し、日本に対する渡航警戒レベルを4段階のうち最も厳しい「レベル4」(渡航中止・退避勧告)に引き上げた。
今回の米国務省による「レベル4」引き上げを受け、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)は24日に声明を出し、米国代表の五輪出場に影響はないとの見解を示した。選手の安全面を懸念した米国の陸上チームが、7月上旬から予定していた千葉県内での事前合宿をキャンセルしていることからUSOPCの動向に注目が集まったが、報道によると、USOPCは米国選手の安全な五輪参加に自信を持っているという。
IOC幹部の発言が日本国内で反発を招き、五輪開催への逆風は止むことなく今なお吹き続けている。バッハ会長は先の国際ホッケー連盟オンライン総会でのあいさつで「カウントダウンに入った。東京はトンネルの終わりの光になる」と発言したという。IOC主導のもと、このまま突き進んでいくのか。東京五輪・パラリンピックは7月23日に開幕する。