「脱姉妹グループ」AKB48が13年ぶり決断 新曲は純メンバーだけ...方針転換の背景は

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   AKB48の「最後の1期生」として知られた峯岸みなみさん(28)の卒業で、グループは大きな節目を迎えることになりそうだ。2021年5月22日に横浜市内で行われた峯岸さんの卒業コンサートには、多数の卒業生が駆けつけ「ヘビーローテーション」(10年8月発売)をはじめとする全盛期の楽曲を次々と披露した。

   峯岸さんの卒業コンサートがAKB48の歴史を凝縮したような内容だったのに対して、翌5月23日のAKB48単独コンサートでは、約1年半ぶりの新曲が9月29日に発売されることが明らかにされた。

   新曲はAKB48のメンバーのみが担当し、08年から続いてきた姉妹グループメンバーを交える方式を改める。一時期のAKB48の楽曲は、姉妹グループ所属の人気メンバーの力を借りる形で売り上げを伸ばしてきたが、この方針を転換した。握手会の運営など、姉妹グループを含めた活動の制度設計にも大きな変化が起きる可能性がありそうだ。

  • 久々のコンサートと新曲発売に感極まって泣き出した向井地美音さん(写真右)。先にステージから降りていた柏木由紀さん(左)が戻って慰めた
    久々のコンサートと新曲発売に感極まって泣き出した向井地美音さん(写真右)。先にステージから降りていた柏木由紀さん(左)が戻って慰めた
  • 卒業コンサートであいさつを終えてステージを降りる峯岸みなみさん。「バトンを、今ここでつなぐことができて、AKBの未来に、また続く道を作ることができたような気がして、本当にうれしく思います」と述べた
    卒業コンサートであいさつを終えてステージを降りる峯岸みなみさん。「バトンを、今ここでつなぐことができて、AKBの未来に、また続く道を作ることができたような気がして、本当にうれしく思います」と述べた
  • 峯岸みなみさんの卒業コンサートには「レジェンドメンバー」が多数出演。大島優子さんは「ヘビーローテーション」を披露した
    峯岸みなみさんの卒業コンサートには「レジェンドメンバー」が多数出演。大島優子さんは「ヘビーローテーション」を披露した
  • 久々のコンサートと新曲発売に感極まって泣き出した向井地美音さん(写真右)。先にステージから降りていた柏木由紀さん(左)が戻って慰めた
  • 卒業コンサートであいさつを終えてステージを降りる峯岸みなみさん。「バトンを、今ここでつなぐことができて、AKBの未来に、また続く道を作ることができたような気がして、本当にうれしく思います」と述べた
  • 峯岸みなみさんの卒業コンサートには「レジェンドメンバー」が多数出演。大島優子さんは「ヘビーローテーション」を披露した

「このAKBを、私たち今の世代でつないでいけるように」

   峯岸さんの卒業コンサートには、「初代神セブン」のうち、舞台のリハーサル(ゲネプロ)で出席できなかった前田敦子さん(29)と芸能界を引退した渡辺麻友さん(27)以外の5人が出演。大島優子さん(32)さんの「ヘビロテ」や篠田麻里子さん(35)が「上からマリコ」(11年12月発売)で会場を沸かせた。指原莉乃さん(28)と北原里英さん(29)も姿を見せ、「Choose me!」(10年2月発売)を披露した。

   峯岸さんは1期生の中では「末っ子キャラ」。終盤のあいさつでは、多くのOGを前に

「私は、過去と今で、できてるんだなって...。そのバトンを、今ここでつなぐことができて、AKBの未来に、また続く道を作ることができたような気がして、本当にうれしく思います」

などと感慨深げに話した。

   このバトンを受け取って「つなぐ」側にいるのが、グループ総監督の向井地美音さん(23)。翌5月23日のコンサートの終演時にステージを後にする直前、涙を流しながら決意表明した。

「先輩たちがつないできてくれた、このAKBを、私たち今の世代でつないでいけるように頑張りたいと思います」

   コンサートは、柏木由紀さん(29)が演出を担当。チーム別、加入時期別、「アイドル」「セクシー」「ダンスがうまい」「歌がうまい」といった特徴ごとに楽曲を割り振り、トーク(MC)なしで48曲を一気に披露するという異例の構成だ。新曲発売は、48曲のパフォーマンスが終わった直後に発表された。ステージが暗転し、スクリーンには

「今回のシングルは――『チャンスの順番』から約10年ぶりとなるAKB48メンバーのみでの歌唱が決定!」

の文字。「チャンスの順番」(10年12月発売)は、この年行われた「じゃんけん大会」を勝ち抜いたメンバーが担当しており、姉妹グループメンバーが入らなかったのは「偶然の産物」。実質的には、配信限定の「Baby! Baby! Baby!」(08年6月発売)以来、約13年3か月ぶりの「AKB48メンバーのみ」のシングルだ。

姉妹グループ参加は2008年「大声ダイヤモンド」から始まった

   AKB48のシングルに姉妹グループメンバーが参加するようになったのは「大声ダイヤモンド」(08年10月発売)にSKE48の松井珠理奈さん(24)が抜擢されてから。12年にHKT48に移籍した指原さんや、NMB48に所属していた山本彩さん(27)ら姉妹グループの人気メンバーがAKB48のシングルに参加することで、AKB48の人気を下支えする効果があった。さらに、姉妹グループのメンバーは、自分のグループの握手会以外にも、AKB48のシングル発売を機に行われる握手会にも参加。姉妹グループのファンが、姉妹グループの「推しメン」との握手を目的にAKB48のシングルを買い支えていた面もあった。

   一方で、デビューしてから日が浅く、これからの活躍が期待できる姉妹グループのメンバーがAKB48のシングルに参加することもあった。AKB48の楽曲の方が姉妹グループよりも歌番組などメディアに露出する機会が多いため、姉妹グループのメンバーとしては、AKB48のシングルに参加することで知名度が上がることも期待できた。

   このように、AKB48のシングルに姉妹グループのメンバーが参加する方式は双方にとって利益があると言えたが、AKB48のメンバーは複雑な思いを抱いていた。特に渡辺麻友さんの卒業シングル「11月のアンクレット」(17年11月発売)では、選抜メンバーの28人のうちAKB48は12人で「過半数割れ」。メンバーからはSNSで公然と不満が噴き出した。

   複雑な思いを持っていたのは向井地さんも同様で、17年6月の選抜総選挙開票イベントのスピーチでは、姉妹グループへの感謝の言葉を口にした上で

「やっぱりAKBが48(グループ)の中でいつまでも1番であり続けたいという想いは変わらないので、必ずAKBを私が引っ張っていきたいと思います。AKB48はAKB48のものなんだと、誰にも渡さないと!そう、宣言したいです」

と訴えていた。向井地さんにとって「AKB48で」新曲を出すことは悲願だったわけだ。

姉妹グループの人気メンバー卒業も影響?

   新曲発売の発表後、柏木さんがその意義を

「もちろんね、今まで姉妹グループのみんなに、いっぱい助けられてね、みんなでどんどんグループ大きくしようといっていう中で、でもこうやって久しぶりに単独(コンサートで)でみんなでやったから、この流れで、AKBだけに任せてもらえた、というのがすっごいうれしいかなって...」

なとど説明していると、思わず涙がこぼれて

「あれ?けっこう嬉しいかも...?おばさんだからさ...?本当に申し訳ない!」

と、うろたえた様子に。向井地さんが引き取る形で

「今まで姉妹グループのメンバーたちが助けてくれた分、今度はAKB48のメンバーだけで戦っていかなければいけないということで、すごく挑戦ではあるとは思うんですけれど...」

と続けた。

   今回の方針転換の背景には、コロナ禍で姉妹グループのメンバーの移動を減らす必要が出てきたことに加えて、各グループの運営の独立性が高まったことが影響している可能性もある。20年春には、元々は同一会社が運営してきたAKB48、HKT48、NGT48の3グループの運営を別々の会社が担うことになったためだ(NMB48、SKE48、STU48は、それ以前から別会社が運営)。さらに、指原さんや山本さんのような全国的に知名度がある姉妹グループメンバーが次々に卒業し、AKB48としては、姉妹グループメンバーをシングルに参加させるメリットが以前よりも小さくなっている可能性もありそうだ。

「『厳しいな、やっぱ』って思うこともあると思うんだけど」

   現時点で新曲の選抜メンバーは発表されておらず、握手会代替イベントなどの特典に関する制度設計も不明だ。ただ、仮に握手会代替イベントに姉妹グループが参加しなくなる場合、姉妹グループのファンが買い支えていた分の売り上げが減少する可能性が高い。向井地さんが「すごく挑戦ではあるとは思う」と述べたのは、この点を念頭に置いているとみられる。宮崎美穂さん(27)も、これに近い発言をしている。コンサート終演後に生放送されたラジオ番組「柱NIGHT! with AKB48」(bayfm)で、「色々試練があると思う」としながらも「本来、そうあるべき」とも話し、前向きに受け止めていた。

「やっぱり、姉妹グループの力を借りたことって、すごくたくさんあったじゃない?だけど、今回はAKB48単独でシングルを出すということで、きっとね、色々試練があると思う。なかなかね、うまくいかないこととか、『厳しいな、やっぱ』って思うこともあると思うんだけど、でも、やっぱり本来、そうあるべきじゃないですか。私はずっとそう思ってたの」

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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