赤ブーブー通信社が打ち出した「分割・分散」開催方式
「ただイベントの規模を小さくするだけでは、参加費を安くしないと価値が薄まってしまいます。ただの小さいイベントになってしまいます。だから結論からいえば、オンリーイベント(以下オンリー)を分割していくことにしました」
オンリーとは一般的に、特定の作品やキャラクターなど内容を限定して開催される同人誌即売会を指す。赤ブーブー通信社は以前から、大規模イベントの中に複数のオンリーを内在させる方式をとっていた。
規模を小さくするため、このイベント内「オンリー」の規模感や組み合わせを工夫することで、イベントの価値を維持し、参加者のモチベーションを保ってきたのだという。そのために申込書をオンラインに集約するなど、デジタルデータ化を進めた。
「イベントの開催間隔をどれくらい開けたら最大効率の集客ができるのか、イベント参加者の年齢層はどのくらいなのか。そういったデータも取って、検証を続けていきました。実は5年くらい前から始めており、今ようやくある程度つかめてきたところです。もともとは、東京オリンピックの影響で大規模イベントの会場となる『東京ビッグサイト』が使えなくなってしまうために講じた策でした」
――データを取り始めて興味深い事象などはございましたか
「例えば、ある人気ゲームシリーズが好きな人々が集まるイベント参加者の年齢層は27、28歳くらいでした。普通は一年たてば、年齢層も1歳ずつ上がっていきます。しかし新作が出たことによって、26歳ぐらいになりました。こうした若い層を取り込んだジャンルは今後一気に伸びていきます。逆に年齢層がグッと上がってきた場合はペースを緩めながら大型の開催時期に集約していきます。
またデフォルメな絵柄のアニメについては作画しやすいためか、本の制作速度が速いようです。イベント数が足りないと逆に参加者は減ってしまいます。開催頻度が月1回でも足りませんでした。分割、分散開催では、こうしたより望まれているスケジュール感を見極めていく作業も行っていました。もちろん失敗することもありますのでトライアンドエアラーの繰り返しです」
――規模を縮小しながらもイベント開催を継続してきたからこそ、感染症対策を含むウィズコロナのイベントノウハウを蓄積することが出来たのですね。一方で、開催し続ける中で見えてきた課題などはありますか。
「課題はやはりコストです。ソーシャルディスタンスのために会場を広く借りないとイベントができませんが、入場者数は減らしているために会場費が割高となっています。大阪市のイベント施設『インテックス大阪』は会場費を減免してくれており、仮に開催ができなくなっても次に向かえますが、、東京ではそういった対応がありません。1/2しか入っていないペットボトルのお茶をお値段据え置きで購入しなくてはいけない状態です。
ノウハウはイベントを実施しないと蓄積できません。『やらないでください』の一点張りだと対策もできない、いまの状況ではコロナ禍明けまで残れません。『補償も会場費の減免予算がつけられないもつけられない、行わない』というのではなく、科学的エビデンスに基づく感染症対策と実情にあった経済支援を実施してほしい。納得できる理由であれば、それを私たちからも参加者の皆様にお伝えしていきます。」