SDGsもうまくいかない
国連が掲げ、各国政府も大企業も推進する「SDGs(持続可能な開発目標)なら地球全体の環境を変えていくことができるだろうか。いや、それもやはりうまくいかない。政府や企業がSDGsの行動指針をいくつかなぞったところで、気候変動は止められないのだ。SDGsはアリバイ作りのようなものであり、目下の危機から目を背けさせる効果しかない。
かつて、マルクスは、資本主義の辛い現実が引き起こす苦悩を和らげる「宗教」を「大衆のアヘン」だと批判した。SDGsはまさに現代版「大衆のアヘン」である。
この「宣言」を「過激」と感じる人もいるだろう。だが本書を読めば、その「過激」さは、現実から目を逸らさず、物事を徹底的に突き詰めた末の「ラディカルな思考」の結論であることに気づくだろう。
私たちはレジ袋を買わず、マイバッグで買い物をする。プラスチックのストローを使わず、紙のストローを使うか、「マイストロー」や「マイ箸」を持参するかもしれない。「フードロス」に心を痛め、環境負荷を考慮する企業の製品を贔屓にする。
そうしたことは必要だし、個人的には意味のある選択だ。しかし、だからといって私たちの社会が排出する二酸化炭素や大量のプラ廃棄物はなくならない。そのことを忘れれば、私たちは「クリーン」や「グリーン」を掲げて宣伝する企業や社会の「グリーンウオッシュ」に容易に欺かれ、自らが作り出した幻影で自分を騙すことになりかねない。
斎藤さんの著書が注目されるのは、そのラディカルな思考のスタイルが私たちに、「いま、そこにある危機」の現実を突き付けるからだろう。