「ウマ娘」の源流は「擬人化ゲーム」「アイドル」「競馬」
プレイヤーが競走馬になり育てられるのが「ウマドンナ」、プレイヤーがウマ娘をトレーニングしていくのが「ウマ娘」と、ゲームの世界観は奇しくもウマ娘とは鏡を介したかのようなウマドンナだが、「当時は擬人化ゲームがまだ定着していませんでした。競馬で萌え要素を入れよう、と考えたら、調教師や厩務員を女性にしよう、となったのかもしれません」と林さんは考える。
確かに擬人化ゲームが流行し始めるのは「艦隊これくしょん」「刀剣乱舞」「アズールレーン」などがヒットする2010年代中盤以降である。「ウマ娘」もプロジェクト始動は2016年だった。なお「競走馬の擬人化」というだけなら、オンラインゲーム「競馬伝説Live!」で実在の牝馬を擬人化したキャラクターがサポートカードとして使われたことがあるが、強化して使うことはできなかった。
擬人化ゲームの台頭に加え、「ウマ娘」の源流にはアイドルコンテンツの影響もある。プロジェクトの発表は2016年3月26日のイベント「AnimeJapan」内で行われたが、初代プロデューサーには「アイドルマスターシンデレラガールズ」等の石原章弘氏(現在は退任)、楽曲プロデューサーに「ラブライブ!」シリーズに関わった木皿陽平氏が起用された点も当時のトレンドがうかがえる。
その後、大の競馬ファンでもあるアニメプロデューサーの伊藤隼之介氏らが制作に携わり、競馬方面の綿密な考証を経て2021年のゲームリリースにこぎつけた。「『ウマ娘』には『実況パワフルプロ野球』などの要素も込められています。美少女ゲームにとどまらない複数のジャンルにまたがるゲーム性が詰まっています」(林さん)とも。
美少女キャラクターを活かすという共通点はあれど、ウマ娘とウマドンナは全く違う水脈からコンセプトが立ち上がり、ゲームコンテンツとして結実していた。ただし反響を比較するに、競馬とネットカルチャーの距離を近づけた貢献度は「ウマ娘」に軍配が上がるだろう。「ウマドンナ」も手を抜いていたわけではないものの、多面的なプレイ要素や考証で「ウマ娘」がより多くの人々の心をつかんだようだ。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)