人気周辺機器ブランド「AUKEY(オーキー)」の複数商品が、通販サイト「アマゾン」から削除されたことが分かった。
一部報道では、同ブランドがいわゆる「やらせ口コミ」に関与していた可能性があると示唆しているが、メーカーは「社内調査では、弊社および弊社の従業員がアマゾンの『やらせ口こみ』に関与した事実はございません」と否定した。
中国発のグローバルテック企業
AUKEYは、充電器やモバイルバッテリー、USBケーブル、イヤホンなどを展開する。
公式サイトによれば、販売会社のAukey Technologyは2005年に設立され、本社は「アジアのシリコンバレー」と呼ばれる中国・広東省深セン市に構える。従業員は18年時点で2200人を数える。
主力ブランドのAUKEYは60か国に展開し、約2億人の利用者がいるという。日本でも知名度は高く、メディアで頻繁に取り上げられている。
しかし、21年5月8日以降、アマゾンの販売ページから商品が削除されているとの報告がSNS上で相次いでいる。
公式サイトでは、人気・新着商品として17点が紹介されている。掲載されているアマゾンのページへのリンクを5月18日に押下すると、2点以外はすべて「入力されたウェブアドレスは当社サイトの有効なページではありません」と表示された。
米アマゾンでも同じ事象
同様の事象は、米アマゾンでも発生している。
米メディアのDigital TrendsやTechCrunch、9to5Macは5月中旬、米アマゾンから複数の中国系ブランドが姿を消したと報じ、その中にはAUKEYも含まれていたという。
いずれのメディアも、セキュリティ製品のレビューサイト「SafetyDetectives」が5月6日に公表したレポートが関係していると示唆している。
レポートでは、やらせ口コミを手がける事業者らのデータベースが流出し、依頼文や投稿者のメールアドレスなど1300万件以上の情報が含まれていたと報告している。
レビュー募集をする人物に接触すると...
J-CASTニュースでは今年2月、AUKEYの充電器のレビューを募集している人物に取材目的で接触していた。この人物はSNS上でAUKEYを含む複数の商品のレビュー投稿者を募っており、アカウントのプロフィール欄には、連絡先として中国でよく使われているフリーメールアドレスが書かれていた。
メッセージを送ると、まず電子決済サービス「PayPal」のアカウントとアマゾンのプロフィール欄のスクリーンショットを送るよう伝えられた。参考として過去に取引したとみられる日本人のアマゾン利用者のプロフィールページが共有された。
指定された商品は約5500円で、総レビューは300件以上、平均評価は星4.5。全額返金とうたっていたが、実質600円で購入できると案内された。「星5文字レビューお願いします 文字数自由です」と指示があった。
公益性があると判断して購入すると、「セラーさんに伝えました」「連休中で返金遅れになってかもしれません 予めご了承ください」(原文ママ)と伝えられ、それから3週間後にアマゾンギフト券4900円分の番号が送られてきた。実際に登録できた(※その後返金対応などをしています)。
セラーは誰なのか問うと、「販売者です」と返事があった。Aukey社かと重ね聞きすると、「はい」と認めた。
アマゾンのガイドラインでは、「対価(無料または割引商品)と引き換えることを条件に投稿を依頼する」行為を禁止している。
アマゾン、Aukey社の見解は
J-CASTニュースが3月にAUKEYの日本正規販売代理店に事実確認をすると、「この件につきましては、Aukey社及び弊社は一切関知しておりません」と関与を否定していた。
Aukey社にも3月中旬に取材を申し込んでいたが、当時、回答はなかった。その後5月19日現在、AUKEYの充電器の募集投稿は削除され、アマゾンから商品ページも消えていた。
今回の削除についてアマゾン広報部に問うと、「個別の販売事業者様のアカウントの状況につきましては、関連する販売事業者様には直接ご連絡しておりますので、恐れ入りますがコメントは控えさせていただきます」と明確な回答は避けたが、次のように続けた。
「私たちは、お客様や販売事業者様に素晴らしい体験をしていただけるよう努めており、それが損なわれる場合には厳正に対処しております。
信頼できるだけでなくお客様の期待に応える商品、そして適正なレビューが掲載された誠実なサイトであり続けられるよう、アマゾンでは長きにわたってポリシーを設けてきました。疑わしい行為を検知するシステムやプロセスを設け、ポリシーに違反する行為があった場合は調査のうえ、販売を一時停止する・中止するといった対処を速やかに行っております。対処の正確性についても常にモニタリングし、厳しい基準を保ってまいりました。
違反と判断された販売事業者様が再発防止策をアマゾンに対して説明したり、違反でないと考える場合はその旨を伝える機会も設けております。また販売事業者様へのサポートも、シアトル本社や世界中の各拠点において、メール・電話・チャットなどを通し24時間365日、15言語以上で行っております」
あらためて販売代理店にやらせ口コミについて聞くと、5月17日に「弊社はAukey社の代理店として一切関知しておりません」とやはり否定し、「複数の製品が削除されていた原因について、Aukey社も調査しながらアマゾンに確認中のようでございますが、Aukey社に直接ご連絡いただけますでしょうか」と答えた。
Aukey社に同じ質問をすると、マーケティング部の担当者は19日、「社内調査では、弊社および弊社の従業員がアマゾンの『やらせ口こみ』に関与した事実はございません。また本件の経緯についてアマゾンジャパンに問い合わせており、現在回答待ちとなっております。今後も、弊社および弊社の従業員はアマゾンの販売ポリシーを遵守し、製品とカスタマサービスの向上に努めてまいります」と回答した。
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)