東京都国立市内のJR中央線・国立駅で、珍しいタイプの回送電車を撮ろうと鉄道ファンが100人ほども集まり、トラブルを避けるために警察も出動する騒ぎがあった。
現場では、撮影の支障になる行為を巡って、差別的な言葉も飛び出す「罵声大会」にまでなっていた。JR東日本八王子支社は「お客様の迷惑にならないよう、マナーは守ってほしい」と呼びかけている。
差別的な言葉を連発
目的の電車が停車しているのと反対側のホームで、多数の鉄道ファンがカメラを持って集結している。コロナ禍の中でマスクを着けた人がほとんどだが、かなり密な状態だ。カメラの三脚もいくつか見られた。
「黄色い線の内側に下がって下さい」と駅のアナウンスが流れ、警視庁の警察官が集団のそばで様子を見ている。電車が停車しているホームでも、駅員が走り回って「危ないよ!」と呼びかけていた。
しかし、集団の中では、撮影の支障になる行為を巡って、罵声が飛び交う。「待て!」「邪魔だよ!」と大声が上がったほか、差別的な言葉も出て、騒然とした状態になった。
JR東日本八王子支社の広報室にJ-CASTニュースが2021年5月20日に聞いたところでは、鉄道ファンが集まったのは18日で、この日は、同年春に導入した新型のけん引用車両「E493系」の性能試験があった。
この新型車両は、青とクリームのツートンカラーで国鉄時代からお馴染みの電気機関車「EF64形37号機」をけん引し、JR長野駅を10時30分に出発した。東京都北区内の田端操車場を目指し、19時10分過ぎに国立駅に入ってきた。そして、他の電車との時間間隔調整で25分間停車していたときに騒ぎが起きた。
運行ダイヤは数日前からSNS上に書き込まれ、撮り鉄が集結
現場にいた鉄道ファン2人にJ-CASTニュースが取材したところでは、ファンのお目当ては、「ザンナナ」と呼ばれる機関車のEF64形37号機の方だった。
情報源は不明だが、運行ダイヤは数日前からSNS上に書き込まれていた。当日は、その通りの時間に走行しているとの目撃情報も寄せられ、国立駅に長く停車することも知って鉄道ファンが集結したようだ。
罵声は、停車している機関車近くにいた鉄道ファンらに対し、反対側のホームにいた一部ファンが浴びせたそうだ。人を映しこまずに車両だけの写真がほしいため、こういった言動に出たのではないかという。他に、「死ね!」といった暴言も聞いたとしている。
カメラ用の三脚は、ブレないようにするためだというが、低速シャッターで撮影をすると、夜ならではの美しい写真が撮れるという。
取材に応じたファンの1人は、「鉄道ファン全体のイメージダウンに直結して肩身の狭い思いをさせられるので、早急にやめていただきたい」と一部ファンに対して訴えた。また、別の1人は、「昨今撮り鉄のマナーが問題視される中で、もはやこうした罵声を上げる人々に注意しても無駄ではないかという呆れを感じます」と漏らしていた。
立川署「電車が止まったり人身事故になったりしたら困る」
そもそもSNSに投稿した鉄道ファンは、どうして運行情報を知ったのだろうか。
この点について、JR東日本八王子支社の広報室は5月20日、「こちらからは、情報を出していません。何を見たかなどは、把握できていないです」と取材に答えた。
電車が停車しているのと反対側のホームには、50人ほどがいたという。ホームでの三脚や脚立の使用は基本的に禁止しており、当日は、守っていない人もいたため注意したとしている。
警察の出動は、多くの客が集まる中で、電車を安全に運行させるため、JR側が要請していた。JRでは、「特に大きなトラブルの情報はありませんが、他のお客様のご迷惑にならないように、少なくともマナーを守って撮影してほしい」と話している。
国立駅を管轄する立川署に20日に取材して聞いたところでは、ホームが人でいっぱいになっているとJR側から連絡があり、交番の警察官2人が駆け付けた。鉄道ファンらが100人ほど集まり、場所の取り合いで「お前、どけ!」などと大声を出していたというが、暴行などはなく、大きなトラブルはなかったとした。
「鉄道ファンの間にネットワークがあって、珍しい電車が来るのが分かるそうです。イベントの主催者と同様に、JRの自主規制に任せていますが、電車が止まったり人身事故になったりしたら困りますので警察も出動することがあります。鉄道の敷地内で撮って電車が止まったりすることもあって、JRもピリピリしているようですね」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)