「令和の怪物」佐々木朗希投手(19)が1軍デビューを飾った。
プロ野球のロッテは2021年5月16日、ZOZOマリンスタジアムで西武と対戦し、佐々木が先発のマウンドに上がった。佐々木は5回を投げ107球、6安打4失点(自責2)。最速154キロをマークし5つの三振を奪った。「令和の怪物」の1軍デビュー戦を専門家はどうみたか。J-CASTニュース編集部は、巨人、楽天、西武などでコーチを務めた橋上秀樹氏(55)に分析してもらった。
本拠地で「怪物」の片りん見せる
プロ野球ファンが待ちに待った佐々木の1軍デビュー。チームは6-6で引き分け勝ち星は付かなかったものの、本拠地でのデビュー戦で「怪物」の片りんを見せた。
その初回、佐々木は先頭・若林楽人(23)に初球をレフト前に運ばれ、続く2番・源田壮亮(28)への5球目に盗塁を許し無死2塁とした。源田をレフトのファウルフライに打ち取り、森友哉(25)にセンター前ヒットを許すも、4番・山川穂高(29)を空振り三振、栗山巧(37)をレフトフライに打ち取り無失点で切り抜けた。
「佐々木投手の立ち上がりですが、ストレートに関しては非常に安定していた。急速にあまりばらつきがありませんでした。投球フォームが安定しているからこそ球速も安定していたと思います。フォームにばらつきがあると、球が速かったり、遅かったりして球速にもばらつきが出てしまう。その点でいえば、佐々木投手の投球フォームが固まりつつあるのかなと感じました」(橋上氏)
将来性を感じさせるフォーク
初回の佐々木の投球で橋上氏の印象に残ったのは、森への初球のストレートと山川に対する3球目のスライダー、そして空振り三振に打ち取った4球目のフォークだという。橋上氏は「この3球はすごいなと感じました。ストレートのキレと伸び。山川選手への最後のフォークはかなりの落差があり、将来性を感じさせる球でした」と振り返った。
2回は三者凡退に抑えたものの、3回は1塁手レアード(33)の失策をきっかけにピンチを広げ、2つの盗塁などがからみ3失点。5回には四球で歩かせた源田に盗塁を許し、2死3塁の場面で自らの暴投で1点を献上。佐々木はこの回を最後に降板し、1軍デビュー戦は勝敗が付かずに終わった。
この日はMAX154キロの威力あるストレートを披露した一方で、5イニングで5つの盗塁を許すなど今後へ向けての課題を残した。佐々木は5月17日に出場選手登録を抹消された。再び2軍での調整となる佐々木が取り組むべき課題について、橋上氏は次のように言及した。
佐々木が目指すべき方向とは...
「西武の選手は、盗塁の場面でみなスタートが良かった。研究されていたのかもしれないが、クイックやけん制に改善すべき点はあるでしょう。佐々木投手は本格派の投手なので大きなモーションで投げたいというのはあるでしょうが、現代野球でクイックステップは避けては通れない。いかに球威を落とさずに改善するか。これが佐々木投手が目指すべき方向だと思います。そして今後、長いイニングを投げるためには球種を増やす必要があるでしょう。この日確認できた球種はストレート、スライダー、フォークの3種類。理想は緩急をつけるためのカーブやチェンジアップで、これを習得できれば大きな武器になる」(橋上氏)
また、橋上氏はこの日の佐々木投手のストレートが、日ハム時代の大谷翔平投手(現大リーグ・エンゼルス)に重なって見えたという。
「佐々木投手のストレートは鍛えて投げられるものではない。持って生まれたものが大きく、そういう観点からいえば選ばれし投手かもしれません。私が西武のコーチをしていた時、大谷投手が日ハムの1軍で投げていた頃も同じような思いで見ていました。天性に恵まれた投手とは、このような投手なのだと。いくら努力してもなかなか追いつけないところにいる、と。常人ではなかなか投げることが出来ないストレートだと感じました。当時の大谷投手にはまだ及びませんが、その域まで行ける可能性を感じました」(橋上氏)