温泉と言えば、一般的には休暇目的で利用されることが多いだろう。しかし昨今は「仕事もできる」温浴施設が広まりつつある。温泉情報専門メディア「ニフティ温泉」を運営するニフティライフスタイル(東京都新宿区)によれば、同社が発表している人気温浴施設ランキングの上位施設の多くが「コワーキングスペース」を設けているという。
なぜコワーキングスペースを設ける温浴施設が増えているのか。また、どんな人々に活用されているのか取材した。
コロナ禍による働き方の変化に合わせて
ニフティライフスタイルによれば、ユーザー投票で選ばれる「第15回 ニフティ温泉 年間ランキング2020」の上位30施設のうち、13施設がコワーキングスペースを設けている。遊休スペースとして着目されているほか、コロナ禍による働き方の変化に合わせて感染症対策を講じながら新たに展開を進める動きもあるという。
さらにコワーキングスペースを導入している施設はほとんど、生活圏内で展開されている日帰りのスーパー銭湯などだった。働きながら休暇を取る、いわゆる「ワーケーション」は遠地での宿泊も含めた滞在を軸としているのに対し、身近なものとして広がりつつあるようだ。
とはいえニフティライフスタイルの広報担当者によれば、一部でニーズが発生していると見られるものの、まだ企業側が提案し認知を広めている段階のように感じるとのことだった。
では実際にコワーキングスペースを導入しているスーパー銭湯は、どのような手ごたえを感じているのだろうか。J-CASTニュースは、「ニフティ温泉 年間ランキング2020」で2位にランクインした「横濱スパヒルズ 竜泉寺の湯」を運営するオークランド観光開発(愛知県春日井市)に取材した。
温泉・サウナ・食事でオン・オフ切り換え
オークランド観光開発は「竜泉寺の湯」や「喜盛の湯」などのスーパー銭湯施設を運営している。1989年に名屋市守山区に開業した竜泉寺の湯は「スーパー銭湯」「高濃度炭酸泉」発祥の施設だという。現在では系列店を全国に6店舗展開しており、ニフティ温泉ランキングでも評価が高い。
同社の広報担当者によると、最初にコワーキングスペースを導入したのは名古屋守山本店で2018年のことだった。翌19年には八王子みなみ野店と横濱スパヒルズにもリニューアルを機に設置した。
休憩スペース内に「ワークスペース」として設置されており、広報担当者によれば多様な人々に利用されているという。
「リモートワークで利用している社会人から、ワーケーションとして仕事をしつつ休みも取り入れている方も多いです。学生さんの勉強にも利用されています。
最近ではサウナで集中力がアップして仕事がはかどる!ということで、サウナー(サウナ愛好家)の方も多いです。『コワーキングスペース×サウナ』に魅力を感じる方も多いと聞きます」
担当者は、仕事に行き詰まったり疲れたりしたときに温泉やサウナ、食事を楽しむことで、オン・オフを切り替えて仕事に取り組むことができるうえ、コストパフォーマンスも魅力的だと話す。
「休暇と仕事を両立させる近場での『ワーケーション』としてもご利用できます。そして仕事を終わらせて帰宅した際には、もう寝るだけの状態なので 1日がすべてここで完結できてしまうところは魅力の一つではないでしょうか。
また、平日ですと1,400円(横濱スパヒルズ)で、時間無制限利用でご利用できますので『テレワーク』に適したコスパNo.1の仕事場でもあると思います」
「仕事もできる温泉」は今後も拡大予定
では、なぜ「ワークスペース」を設けたのだろうか。オークランド観光開発の広報担当者は、コワーキングスペースを設けた背景について「温浴施設が多様性をもち、お風呂という箱を通して新たな価値を創出できないかと感じていた」と設置した背景を語った。
実際にワークスペースが設けられた空間には、コーヒー飲みながら読者を楽しめるラウンジエリアや、書籍やコミックを揃えた「Book libraryエリア」、半個室空間「ログシェルタ」などのエリアも展開されており、人それぞれの楽しみ方があるという。
オークランド観光開発は今後、ワーキングエリアの拡充や「テレワーク」・「ワーケーション」プランなども展開する予定だという。2022年の春には、千葉県流山市おおたかの森駅に「ワーキングスペース」をはじめ、サウナなどの人気コンテンツの付加価値を高めた施設をオープンすると意気込んだ。
またニフティライフスタイルの広報担当者も、より身近な環境での新しいライフスタイルとしてこうした施設への訪問を検討してほしいと語った。
(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)