富山ライトレールとの違いは?
宇都宮に先駆けて日本国内で低床車両によるLRTを開業させた例としては、富山市の富山港線(富山~岩瀬浜)がある。元はJR西日本の富山港線で廃線が検討されていた鉄道だったが、2006年にLRTの富山ライトレールに転換し停留所数も増やし、増発により収支は大幅に改善、富山市の基幹交通として再生を果たした。
富山市の市内電車としては他に富山地方鉄道軌道線があり、JR富山駅を挟んで富山港線が北側、富山地鉄が南側に展開していたが、富山駅の高架化に合わせて両線のレールがつながり2020年3月に直通運転が始まった。同月に富山ライトレールと富山地方鉄道は合併し、富山地鉄による一元運営も実現する。
富山市は少子高齢化するコミュニティにおいて、従前より公共交通を活用して市街地の活性化を図る「コンパクトシティ」を重視していた。「もとは需要が低迷していたローカル線を転換し再生させたという点で、宇都宮ライトレールとはやや性格が異なります。南側の富山地方鉄道と接続させたところまで、富山市のコンパクトシティ構想に後押しされて成功したものと思います」(枝久保さん)。
宇都宮市の人口は約51万人、富山市は約41万人で宇都宮市の方が多く、運行距離は富山港線・軌道線にほぼ並ぶ。ライトラインは23年の開業区間に加え、宇都宮駅西側への延伸計画も検討中であり、市の東西を貫く交通軸に宇都宮市は位置付けている。ライトライン停留所を交通結節点としてバス路線を再編・新設し、公共交通の空白を埋めようという構想だ。宇都宮駅西側では東武宇都宮線とバス・ライトラインを接続させるプランも有している。バス・マイカーとの競合に敗れて廃止されていった昭和期の路面電車と異なり、異なる交通機関と結合して便利なネットワークを提供する役割を担うことになる。