キャンセルが出たワクチン接種について、自治体のトップらが代わりに受けたことがマスコミから批判的に報じられ、トップらが弁明に追われる事態が相次いでいる。
しかし、ネット上では、廃棄されるよりずっといいと報道に苦言を呈する向きも多い。キャンセルが出たときは、どんな対応をすればよいのだろうか。
自治体トップらが代わりに受けて、マスコミから批判的に報じられたが...
茨城県城里町の上遠野(かとうの)修町長(42)が医療従事者枠で接種を受けたことが2021年5月中旬に発覚すると、週刊誌のウェブ版記事は「上級国民か」と批判が出ていると報じた。
これに対し、上遠野町長は、会見を行い、キャンセルで廃棄を避けるため、医療従事者に準じる立場として接種を受けたとして、「感染して行政を停滞させないため接種した」と説明した。
しかし、マスコミの批判的報道は収まらず、会見翌朝のワイドショーも、町長の行為を「抜け駆け」だと表現し、同様に批判的な声を紹介した。
同じころ、今度は、兵庫県神河町の山名宗悟町長(62)が高齢者枠で接種していたと地元紙のウェブ版で報じられ、山名町長がマスコミ取材に対し、公立病院の管理者として受けたと説明し、「廃棄予定だった分を有効活用した。危機管理のために打った」と強調した。
こうした自治体トップの接種については、「こういうケースでは誰を連れてくるべきか検討しないと」「しっかりした説明無いと誤解を招く」などと疑問の声もネット上で出た。しかし、医療関係者からも町長らの行為への擁護は多く、「首長がぶっ倒れたらその後困るのは自治体の住民」「現場判断で十分だと思います」と言った声が出たほか、「これを叩くマスメディアはおかしい」「なぜ臨機応変に対応した行政が批判されるのか」と疑問を呈する向きも多かった。
新潟県三条市は学校教員らを対象に
自治体トップらがキャンセル分を接種したことについて、厚労省の予防接種室では5月14日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように話した。
「原則として、キャンセルが出たら、代わりの医療従事者や高齢者に打っていただくようお願いしています。それ以外の方に打つのは、その日の接種が終わるギリギリのときなど、あくまで例外になります。そのときの状況で、最終的に自治体が柔軟に対応するのは構いません。自治体の判断ですので、厚労省が白か黒かを言うことはできないです」
キャンセル分をどうするかについては、各自治体も様々な取り組みを始めているようだ。埼玉県戸田市のように、住民の理解が得られやすくするため、キャンセル待ちリストを作って対応する自治体も出てきている。
新潟県三条市では、キャンセル分は小中学校などの教職員に受けてもらうことを決め、滝沢亮市長が5月13日の会見で明らかにした。滝沢市長はこの日、ツイッターでもこの体制を準備していると投稿し、3万件以上もの「いいね」が寄せられるほどの反響を呼んでいる。
同市の政策推進課は14日、この取り組みを始めた理由について、こう説明した。
「子供たちは接種の対象ではありませんので、学校での感染拡大を阻止しようと、先生方の接種を考えました。24日から高齢者の接種も始まりますが、キャンセルが出ても、その方の環境次第でそんなにすぐに代わりと言われてもという方もいらっしゃると思います。こうした難しい状況もあり、先生方でしたら対応しやすいと思いますので、ワクチンのロスを少なくできると考えています」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)