パレスチナのイスラム原理主義組織、ハマスがイスラエルの主要都市・テルアビブに多数のロケット弾を発射し、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区を空爆している問題では、報復の連鎖が繰り返されつつある。そこに中山泰秀防衛副大臣が「私達の心はイスラエルと共にあります」と、政府見解と異なるともとれる内容をツイートし、波紋が広がっている。
中山氏のアカウントにはパレスチナ側を支持する立場の人から批判が殺到しているが、中山氏は「私はパレスチナの方がテロリストだと書いたことは1回もない」と反論している。
「SavePalestine」のハッシュタグ付きで批判の返信が大量に...
中山氏はツイッターで、イスラエル軍のツイートを多数リツイートしている。その中には、ロケット弾による被害状況や、90%以上は「アイアンドーム」と呼ばれる対空防衛システムによる迎撃に成功していること、ハマスなどの「テロ工作員」を15人以上殺害したことなどをイスラエル軍広報担当者が動画で説明しているものもある。中山氏は、このツイートを引用しながら、5月12日未明に次のように書き込んだ。
「あなたならどうしますか?ある日突然24時間で300発以上のロケット弾がテロリストによって撃ち込まれ、愛する家族の命や、家を奪われたら。イスラエルにはテロリストから自国を守る権利があります。最初にロケット弾を一般市民に向け撃ったのは一体誰だったのか?私達の心はイスラエルと共にあります」
このツイートには、「SavePalestine」(パレスチナを救え)のハッシュタグ付きで
「イスラエルはテロリスト国家」
という返信が大量に寄せられたほか、
「そう思うならイスラエルの攻撃も止めるよう言いなさいよ」
という声も寄せられた。
政府公式見解は「すべての関係者に対し、一方的行為を最大限自制」求める
なお、外務報道官が5月11日に発表した談話では、イスラエル・パレスチナ情勢について「深刻な憂慮を表明」した上で、「暴力行為を強く非難」。さらに、
「日本政府は、すべての関係者に対し、一方的行為を最大限自制し、事態の更なるエスカレートを回避し、平穏を取り戻すよう強く求めます」
としている。
対立の背景にあるのは、パレスチナ人居住地域でのユダヤ人入植地問題だ。報道官声明では、イスラエル側の対応を非難している。
「この関連で、シェイク・ジャッラーハ地区を含む東エルサレムのパレスチナ住民に対する強制立ち退き命令の可能性は、事態を更に悪化させかねないものと指摘せねばなりません。また、イスラエル政府当局による東エルサレムにおける540棟の入植地住宅建設計画は、我が国が国際法違反として幾度となく撤回を求めてきたイスラエル政府による入植活動の継続にほかならず、まったく容認できません。イスラエル政府に対し、その決定の撤回及び入植活動の完全凍結を改めて求めます」
 このように、中山氏のツイートは、日本政府の立場とは距離がある。立憲民主党の蓮舫代表代行も「防衛副大臣のこの投稿は政府の見解とは違います」とツイッターで指摘した。
中山氏「混同をするようなことをやめて」
中山氏は発言の修正などには応じない考えだ。中山氏は5月12日夕方、報道陣の取材に応じ、ロケット弾を発射した「ハマス」が、公安調査庁が発行する「国際テロリズム要覧」に「国際テロ組織」として掲載されていることを挙げながら、パレスチナ人とハマスを区別して理解すべきだと話した。
「私はパレスチナの方がテロリストだと書いたことは1回もない。私が申し上げたいのは、そういう混同をするようなことをやめていただきたい(ということだ)。日本の公安調査庁やアメリカが指定しているテロリストであるハマス、このハマスがミサイルを打っている。私がツイッターに書き込んだのは、こうしたテロリストをなくしてほしい、イスラエルという国は、そして日本であっても、テロから自国民を守る権利はあるのではないか、これをしっかりと訴えたいと思ったまで。パレスチナの一般の方は、テロリストに盾に使われている」
この説明を踏まえても政府見解と齟齬(そご)がある点には変わらないが、中山氏は「政治家としての、個人の考えだ」と述べた。
加藤勝信官房長官は5月12日夕の会見で、
「個人のツイッターでの発言だと承知しているので、その意図を承知しているわけでもない。コメントは差し控えたい」
と述べるにとどめた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)