2021年夏の開催を困難視する声が高まっている東京五輪・パラリンピックについて、国民民主党が再延期論を打ち出した。玉木雄一郎代表は21年5月13日の定例会見で、7月の開催が可能かを5月中に検証することを求めた上で、仮に不可能な場合は、ワクチン接種が順調に進めば「1年ぐらい経てば、かなり状況が改善している」として22年秋に再延期すべきだとした。
多くの野党が「21年夏は中止」を主張する中、改めて国民が独自路線を打ち出したとも言えそうだ。
延期後は規模縮小しない&有観客の「完全な形で」開催予定だったが...
東京五輪をめぐっては、安倍晋三首相(当時)が20年3月、21年に「完全な形」で実施したいとして延期を表明。「完全な形」の意味を「規模は縮小せず、観客にも一緒に感動を味わっていただきたい」と説明していた。
玉木氏は、
「これ(完全な形)はどうも達成できそうにない、ということだ。ある種不完全な形で、この7月にやろうとしているが、果たしてできるかどうかについては、多くの国民が疑問を感じている」
と指摘。国民の命と健康を守ることを最優先に、(1)コロナで逼迫(ひっぱく)する医療体制の負担が、どのくらいあるのか(2)追加の財政負担、特に国民負担が生じるような形にならないのか(3)実効性ある感染症対策や、水際対策がきちんと取れるどうか、の3つの観点から、医療関係者を含む第三者機関を設置して、7月の開催が可能かを5月中に検証すべきだとした。
ワクチン接種進むと「1年ぐらい経てば、かなり状況が改善している」
その上で、仮に7月の開催が不可能だとなれば、22年秋への再延期を提案したい考えだ。玉木氏は、延期を決めた20年3月よりも感染者が大幅に増えているため「冷静に考えれば、なかなかできないだろうということだが...」と話す一方で、ワクチン接種が進むことに期待を寄せた。
「仮に、ワクチン接種が、うまく政府が言うように順調に進めば、1年ぐらい経てば、かなり状況が改善しているし、何より医療に対する負担が非常に低下しているのではないかと思われる」
さらに、
「アスリート・ファーストという観点から、酷暑を避けるという意味」
で、秋開催を提案したいとした。
野党の多くは、「21年夏の中止」で足並みをそろえている。方針の表明が早かったのは共産党で、志位和夫委員長が1月21日の衆院本会議での代表質問で、
「今年夏の五輪開催は中止し、日本と世界のあらゆる力をコロナ収束に集中するべき」
だとしている。
立憲の枝野幸男代表は5月10日の衆院予算委員会で、「できるならやりたいと思う」などと繰り返す一方で、オリパラのために来日する人や国民の命と健康を守ることと、オリパラの開催を両立させることは「不可能と言ってもいいのではないかと、残念ながら言わざるを得ない」と述べた上で、
「もう残り期間を考えると判断を先送りはできないタイミングだと思う」
として、21年夏については早急に中止の判断をすべきだとした。
「単に『中止』と決めきってしまうことも...」
社民党の福島みずほ党首は5月11日の参院厚労委で、開催都市契約では、国際オリンピック委員会 (IOC)が「本大会参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠がある場合」に大会を中止できるという条項があることを指摘し、
「これは(IOCに対して)中止すべき、中止してほしいということを日本側から言うべきじゃないですか」
としている。この3党は21年夏の中止を求めることでは立場を明確にしているが、単に中止するか、それとも22年への再延期を目指すかははっきりしていない。一方の玉木氏は、単に中止とすることには反対する立場だ。
「これだけの世界的イベントですから、本当の意味で人類がコロナを乗り越えた証として開催することを、もう一度東京として、日本として模索すべきという思いは変わらないので、単に『中止』と決めきってしまうことも、私はないのかな(と思う)」
なお、組織委員会の武藤敏郎事務総長は4月28日の記者会見で、再延期について「大きな技術的理由で無理ではないか」と発言。同テーマについてIOCと議論したこともないとしている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)