きっかけはSNSの書き込み
共同第一著者で、千葉大医学部助教の清水啓介さんに話を聞いた。
――研究の動機は
これまで我々は長年に渡り、どこへ行っても(受診しても)治らない、どんな治療を受けても消えない腰痛を抱えた多くの患者様を、県内外のあらゆる地域から受け入れて真摯に向き合ってきました。
最新の薬剤や注射、リハビリテーション、認知行動療法、必要な方には手術など、ありとあらゆる方法を試みてきましたが、慢性腰痛症の患者様の多くがそうした治療に対しても好転せず、我々もまた悔しくやり切れない想いを抱えてきました。これまでの治療とは根本的に異なる、腰痛治療のブレイクスルーとなる全く新しい試みをずっと求めていました。
――RFAが腰痛改善に効果的だと仮説を立てた根拠は
これまでに行われた多数の研究で、腰痛や肩こりなどに運動療法(リハビリテーション)が効果的であることは事実としてわかっていましたが、運動はどうしても辛く厳しいイメージがあり、また多くの慢性腰痛の患者様はそうした通院リハビリテーションを様々な理由で脱落されているという経緯がありました。
やや専門的な話題となりますが、慢性的な痛みを有する人は中枢性疼痛抑制機構や下降性疼痛抑制系といったドパミン系の痛みのブレーキシステムが脳内でうまく機能していないことが多いと思われます。ドパミンとは一般的に達成感などで分泌される神経伝達物質であり、慢性腰痛になると趣味が続けられなかったり、今までできていたことができなくなったりするためドパミンが放出されにくくなり、意欲も低下するという負の連鎖を起こします。
RFAが発売された当初、SNSで「RFAで腰痛が改善した」「肩こりが改善した」という書き込みが散見され、実際にRFA自体にも腰痛や肩こりの改善プログラムが組み込まれているなど、医療器具ではないものの明らかにそうした痛みを改善させることを意識しており、また任天堂株式会社様のお家芸とも言われるプレイヤーをゲームに夢中にさせる技術が素晴らしく、この組み合わせであればもしかしたら我々の抱えている多くの慢性腰痛患者様を救えるかもしれない、と思い立ったのが本研究のきっかけです。