大幸薬品が5月7日に発表した2021年12月期第1四半期(1~3月)の連結営業損益は、約2億円のマイナスと大幅に悪化した。
新型コロナウイルスの感染拡大以降、業績を牽引した空間除菌剤「クレベリン」の売れ行きが落ち込んだためだ。
積極投資が裏目に?
売上高は前年同期比21.3%減の約32億7000万円、本業のもうけを示す営業利益は1億9000万円の赤字(前年同期は5億6000万の黒字)、当期純利益は1億4000万円の赤字(同2億7000万円の黒字)と、前年同期から一転、大幅に悪化した。
稼ぎ頭の感染管理事業の低調が響いた。クレベリン(関連商品「クレベ&アンド」含む)は、競合含め除菌商品が供給過多となり、同セグメントの売上高は23億6000万円(前年同期28.3%減)にとどまった。
20年12月期連結決算(決算期変更のため9か月分のみの実績)は、コロナ禍でクレベリンの需要が急拡大し、売上高が175億8000万円、当期純利益が38億5000万円といずれも過去最高を達成していた。
新工場稼働による生産能力向上、チャネル拡大をにらんだ業務用機器「クレベリン発生機 エレクローラー」の発売や医療機関への無償提供、グローバル展開に向けた海外法人の設立など、クレベリンへの投資を加速していたが、暗雲が立ち込めた格好だ。
犬猫用クレベリンの製造販売承認を得る
クレベリンをめぐっては、消費者庁が2014年3月、二酸化塩素を発生させるグッズを部屋に置いたり首にかけたりするだけで「空間を除菌できる」とうたった宣伝には根拠がなく、景品表示法違反(優良誤認など)に当たるとして、大幸薬品など17社に再発防止などを求める措置命令を出していた。
コロナ禍でも、クレベリンの有効性に疑問を呈する報道が散見され、商品サイトでは「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するデータは現在取得中です。尚、日用雑貨品のため、特定ウイルス・菌、疾病等に対する効果・予防等を謳うことはできません」と説明している。
大幸薬品は今回の決算資料で、今後の除菌関連市場の需要は不透明だとし、新型コロナウイルスに対する二酸化塩素(クレベリンの含有成分)の効果の裏付けや、新製品・新規チャネルへ注力する方針を示した。
5月6日には、ペット向け商品「薬用クレベリンクリーナー犬猫用」が製造販売承認を得たと発表した。二酸化塩素ガス溶存液を使用した動物用医薬部外品で、犬猫の耳内や足の殺菌消臭を目的とする。発売日は未定。
同社広報部によれば、これから商品化について検討していく。「動物医薬部外品の市場規模は(ペットの市場ピラミッドの)頂点でそこまで大きくはないですが、そこから下も狙っていければと考えています。そこを取ることで、クレベリンの信頼性も上がりますし、将来的には人向けの医薬品を目指しているので、そのステップとしていければと思っています」