競馬で騎手が落馬し、馬だけが走り続けてしまうことがある。2021年5月9日開催のG1レース・NHKマイルカップでは、スタート直後にバスラットレオン騎乗の藤岡佑介騎手が落馬し競走中止となった。
しかし騎手を失ったバスラットレオンは走り続け、そのまま他の出走馬と一緒にゴールしてしまった。このように、騎手を失ったいわゆる空馬が走り続け、ゴールまでしてしまう事態はなぜ起こるのだろうか?
空馬なのにトップでゴールも
騎手が落馬した競走馬はその時点で競走中止となり賭けた馬券は紙くずと消えるが、人間の事情などお構いなしに馬は走り続けてしまうケースは多いようだ。
その理由について、公営競技ライターの佐藤永記さんは2021年5月10日のJ-CASTニュースの取材に、次のように話す。
「馬はもともと群れになって走る動物です。そして競走馬はレースに備えてゲートが開いたらちゃんと走るよう、ゲート試験を受けて合格しないと出走できません。調教でゲートが開いたら他の馬と並走する訓練を受けてきていますし、馬の方でもなんとなくレースが始まったら走る、という感覚を持っています。馬の習性と訓練で、空馬になっても走り続けてしまうことが多いです」
ゴールドシップなどはその性格からゲート入りにも難があり、ゲート試験で再審査を課せられることもあった。また過去には落馬で競走中止になりながら、トップでゴールしてしまった馬もいる。
2008年のエリザベス女王杯ではスタート直後にポルトフィーノ騎乗の武豊騎手が落馬する。ところがポルトフィーノは走り続けて集団のトップに位置し、そのままゴール前でもスパートをかけて先頭でゴールしてしまった。当然ポルトフィーノのゴールは無効で1位はリトルアマポーラだったが、佐藤さんによると実はこういう事例は珍しくないそうだ。
「空馬だと騎手が乗っていないので馬にとってはむしろ軽くて走りやすいのです。騎手が制御できないのでコーナーでは外回りになってしまいますが、トップでゴールしてしまう方が多いくらいかもしれません」