バスケットボールの八村阿蓮選手は2021年5月4日、SNS上で自身と兄の八村塁選手に対する人種差別的なDM(ダイレクトメッセージ)が寄せられたと明かした。
阿蓮選手は「日本には人種差別が無いと言ってる人がいるけどこうやって人種差別発言をする人がいます」と伝え、塁選手も「こんなの、毎日のようにくるよ」と実情を語った。
「晒してどうにかなる問題では無いと思いますが...」
富山県出身の塁選手と阿蓮選手はともにベナン人の父と日本人の母を持つ。兄の塁選手は米NBAワシントン・ウィザーズで主力として活躍。東海大学在学中の弟・阿蓮選手も21年2月まで日本のプロバスケットボール・B1のサンロッカーズ渋谷で特別指定選手としてプレーし、将来の活躍が期待されている。
弟の阿蓮選手が4日夜、ツイッターで、自身のインスタグラムに寄せられたDMを公開した。内容は「死ね、間違えて生まれてきたクロンボ」「お前もお前の兄もバスケがうまいだけのただのクロンボ」と、自身や兄に対する人種差別的なメッセージだった。
阿蓮選手は「日本には人種差別が無いと言ってる人がいるけどこうやって人種差別発言をする人がいます。晒してどうにかなる問題では無いと思いますが、皆さんに今一度人種差別の問題について関心を持っていただきたいと思いました」と公開した意図を説明。塁選手は阿蓮選手のツイートに返信する形で「こんなの、毎日のようにくるよ」と明かした。
阿蓮選手のツイートを受け、日本のバスケ界も反応した。B1・三遠ネオフェニックスなどで活躍し、現在はBリーグ復帰を目指す並里祐さんは「これは悲しい。バスケうまいだけって、その"だけ"が難しいだよね。"だけ"でも極めたら素晴らしい事。人種は全く関係ない。人種差別だけじゃなく、いじめも一緒だと思う。人と少し違う、周りと違うだけで、差別される」と持論を示した。
また、専修大学在学中で、B1横浜ビー・コルセアーズに3月まで特別指定選手として在籍したキング開選手は「いつになったら無くなるんだろう。いいこと何もないのに。世界のどこ行っても差別問題があるということを知って欲しい」とツイートした。キング選手はツイッターのプロフィール欄を通じ、自身が日本とアメリカのハーフであること、「I'm black and I'm proud」(私は黒人であることを誇りに思っている、編集部訳)というメッセージを伝えている。
日本プロスポーツでも「人種差別」訴える動き
米プロスポーツ界では、20年5月に米ミネソタ州で黒人男性が白人の警察官に殺害された事件を契機に、NBA、NFL(アメリカンフットボール)、MLB(野球)などで人種差別に反対する抗議活動が行われた。アメリカを中心にプレーするプロテニスの大坂なおみ選手も、20年8月に米ウィスコンシン州で黒人男性が銃撃された事件に抗議し、当時出場予定だった試合をボイコットしている。
日本のプロスポーツ界でプレーするアスリートも、自身の経験を元に人種差別問題を訴えている。
ナイジェリア人の父を持つプロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスのオコエ瑠偉選手は、20年6月にツイッターで、日本で受けてきた人種差別の経験を伝えた。保育園の頃には、周りの園児が肌色のクレヨンで親の似顔絵を描く中、涙ながら茶色のクレヨンで親の顔を描いたところ、周囲から笑われたという。
オコエ選手は「この時は毎日が辛すぎた。家のベランダから外を眺めながら、ここから飛び降りて生まれ変わって、普通の日本人になれるかなとか、考えてた」と当時を振り返る。その後も数々の差別を受けたと明かし、「こういう経験があるからこそ、悔いないように生きようと思う」「唯一心の痛みを分かち合えたのは、妹の桃仁花だった」と語った。
バスケットボール女子Wリーグ・富士通レッドウェーブ所属のオコエ桃仁花(モニカ)選手は、兄のツイートに「これを読んだ時涙が止まらなかった 私と兄で毎日涙目になりながら支えあってた日々。私は兄がいなかったら内気な女の子でバスケもやってなかったな〜」と反応した。
桃仁花選手は2021年4月30日、ウェブメディア「リアルスポーツ」の記事で、当時兄とともに人種差別に関するツイートを発信した理由について「自分たちが批判されるより、同じ境遇にいる子どもたちを助けたい気持ちが大きかった」と語っている。
日本には人種差別が無いと言ってる人がいるけどこうやって人種差別発言をする人がいます。晒してどうにかなる問題では無いと思いますが、皆さんに今一度人種差別の問題について関心を持っていただきたいと思いました。 pic.twitter.com/QOXKtWFbXS
— 八村 阿蓮 (@allen_hachi) May 4, 2021