「日本の台所」豊洲市場をはじめ、東京都内に11か所を数える中央卸売市場。3度目の緊急事態宣言を受け、各市場内にある飲食店は、感染対策のため酒類の提供を控えるよう求められている。
一方で、市場にある飲食店はそもそも休業要請の対象外のため、酒類の提供を取りやめても協力金は発生しない。この状況に、現役の国会議員もツイッター上で疑問を呈している。一体なぜ、こうした構造になっているのか。東京都中央卸売市場の担当者に話を聞いた。
「市場を機能させるために不可欠」 休業要請対象にならず
2021年4月25日~5月11日の期間で出されている今回の緊急事態宣言。都は酒類を提供する飲食店に対して休業、酒類を提供しない店には20時までの時短営業を要請している。要請に従った店には事業規模に応じて協力金が支払われる。
ただ、この「例外」となっているのが、豊洲、大田など都内の中央卸売市場にある飲食店だ。市場の飲食店といえば、朝早くから市場で働く人たちにとってはなくてはならない存在。一方、寿司屋をはじめ様々な飲食店が集まる豊洲のように、一般向けにも開かれた「グルメスポット」として知られる場所もある。朝早くに開店して、昼過ぎには閉まるのも特徴だ。
そもそも、都の卸売市場はスーパーやコンビニなどと同じ「社会生活を維持するために必要な施設」とされ、今回の休業要請の対象外となっている。J-CASTニュースが2021年4月28日、都の中央卸売市場の担当者に取材すると、「市場の飲食店関連事業者は『市場業者に飲食を提供する』という重要な役目を担っている。市場を機能させるために不可欠」な存在だとして、場内にある飲食店も対象外になっているとした。
都は場内の飲食店に対し、感染拡大を防ぐため酒類の提供を控えるよう一貫して呼びかけているという。しかし、市場内の店にとっては、そもそも休業要請の「対象外」なため、このタイミングで酒類の提供をやめても、協力金を受け取ることができない仕組みだ。
音喜多議員は「余りに酷すぎませんか」
こうした状況に疑問を呈したのが、東京都選出の音喜多(おときた)駿参議院議員(日本維新の会)だ。28日、自身のツイッターで、場内の飲食店が酒類の提供自粛を求められる一方で、協力金が出ない現状について「余りに酷すぎませんか」と訴え、
「豊洲市場内にある飲食店は外部の来場者も対象として営業しており、市場業者のみが利用するわけではない。アルコール提供の自粛を求めるのであれば、協力金を払うのが筋」
と持論を示した。
音喜多議員が指摘した「外部の来場者」の存在を、都はどう捉えているのだろうか。中央卸売市場の担当者はJ-CASTニュースの取材に対し「見学者が(市場の飲食店に)来るというのは結果論であって、それを目的にしているわけではない」との認識を示した。その上で「本来の目的は市場の中で働いている人たちへの飲食の提供」だと説明し、現状では休業要請・協力金の対象になっていないとした。