コロナ禍でアイドルの「握手会」イベントが開催できなくなって1年以上が経つ。握手会がファンとアイドルが直接話せる数少ない機会なのはもちろん、CDにイベント参加券をつける方式は、アイドル事業の収益の柱のひとつでもある。各地のアイドルグループでは、ファンとアイドルがコミュニケーションを取る場を確保しようと、試行錯誤が続いている。
イベントの多くが「オンライン握手会」といった取り組みに移行しているが、一部では対面式のイベントも復活している。ただ、対面式の場合、新型コロナウイルスの感染状況によっては延期や中止のリスクも残る上、会場への移動で感染リスクを懸念するファンもいる。こういった背景を踏まえて、対面式とオンラインの両方を行う「ハイブリッド型」ともいえる取り組みも進みつつある。
グループごとにイベント名もアプリもバラバラ
握手会はアイドルとファンが至近距離で会話する上、握手で物理的に接触するため、感染リスクが高いと考えられている。握手会の開催が影響を受けた時期も比較的早く、新型コロナの感染事例が国内で確認された翌月にあたる20年2月頃から中止や延期が相次いだ。
AKB48グループの場合、握手会のオンライン化が本格化したのは20年9月頃。姉妹グループごとに運営会社やレコード会社が異なるため、イベントの呼び方も使うアプリもバラバラだ。例えばAKB48は、事前に握手する相手や時間帯を指定してCDを予約する「個別握手会」の代替イベントを「オンラインお話し会」と呼び、「WithLIVE Meet&Greet」というアプリをスマートフォンにインストールしてメンバーと会話する。
これに対して、NMB48とSTU48が開いているのは「オンライン個別お話し会」。名前は同じでも、使用アプリはそれぞれ「AERU WORLD」「Meet Pass」で、別々だ。HKT48とNGT48は、それぞれ「オンライン握手会」「オンライン個別おしゃべり会」を開催。名称は異なるが、利用するアプリは同じ「LINE Face2Face」だ。
このような形で、現時点でも多くのクループが握手会の代替イベントをオンラインで続けている。
異色なのがSKE48。握手はできないものの、対面にこだわった。20年7月に開催した「現地でオンライントーク会」では、ファンが会場に出向いた上で
「メンバーから一定の距離を(6m前後を想定)おいた場所に、お客様専用のタブレットを設置」
した状態で、タブレット端末越しにメンバーと会話した。これが10月には「現地でトーク会」になり、
「メンバーから2.5m程度の距離を空け、透明の飛沫防止シートを挟んで、お互いの顔が見える距離感で、お客様とメンバーが直接お話頂ける場」
に変化。「生声」で会話ができるようになった。
ただ、対面型のイベントは感染状況の影響を受けやすいという弱点が残るのも事実だ。21年2月に愛知県内で予定されていた「現地でトーク会」は、愛知県に2回目の緊急事態宣言が発令されたことを受け、21年5月に延期された。