報道の自由度「日本67位」の理由とは 国境なき記者団があげた「記者クラブ問題」、大手紙ほぼスルー

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   国際NGO「国境なき記者団」(RSF、本部・パリ)は2021年4月20日(現地時間)、恒例の「報道の自由度ランキング」の21年版を発表した。ランキングの対象は180か国・地域で、日本は20年よりひとつ低い67位だった。

   日本の状況に関する説明で目新しいのが、菅義偉首相について「報道の自由をめぐる環境を改善するために何もしていない」という評価が加わった点だ。それ以外はほとんど20年と同じ内容で、引き続き記者クラブの問題が指摘された。ただ、ランキングを報じる日本メディアの多くが、この点を引き続き「スルー」した。

  • 2021年版の「報道の自由度ランキング」では、菅義偉首相について「報道の自由をめぐる環境を改善するために何もしていない」と批判した(2021年2月撮影)
    2021年版の「報道の自由度ランキング」では、菅義偉首相について「報道の自由をめぐる環境を改善するために何もしていない」と批判した(2021年2月撮影)
  • 2021年版の「報道の自由度ランキング」では、菅義偉首相について「報道の自由をめぐる環境を改善するために何もしていない」と批判した(2021年2月撮影)

菅首相は「報道の自由をめぐる環境を改善するために何もしてこなかった」

   RSFはこの1年の世界的な傾向として

「人々の情報へのアクセスが劇的に悪化し、報道に対する障害が増えている。新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)が、ジャーナリストが情報源にアクセスしたり現地取材したりすることを妨害する理由として利用されている」

などと指摘。日本の説明では、冒頭に次の1文を加えた。

「菅義偉氏は、安倍晋三氏のかつての右腕で、20年9月に首相を引き継いだが、報道の自由をめぐる環境を改善するために何もしてこなかった」

   それ以外の書きぶりは、12年の自民党の政権復帰の表現が少し変わった程度で、ほとんど20年と同じ内容だ。具体的には、「世界第3位の経済大国である日本は、メディアの自由と多元主義の原則を尊重している」としながらも、「慣習や経済的利益の影響で、ジャーナリストが民主主義の番人としての役割を完全に果たすことは難しい」と指摘。

   その背景として、12年に自民党が政権に復帰してから「ジャーナリストは自分たちに対する不信感を訴えてきた」こと以外に、次の3つを挙げた。

原発事故&在沖米軍報道への嫌がらせ、特定秘密保護法の問題も

「記者クラブ制度が、フリーランスや外国人ジャーナリストの差別を続けている」
「SNSでは、政府に批判的だったり、福島第1原発事故や在沖米軍問題のような『反愛国的』テーマを報じたりするジャーナリストに対して、民族主義グループが嫌がらせを行っている」
「政府は、内部告発者やジャーナリスト、ブロガーが『違法に』入手した情報を公開したとする判決が確定した場合、最長で10年の懲役刑を科せられる『特定秘密』を保護する法律についての議論を拒否し続けている」

   4月22日夕時点で、ランキングの21年版について報じているのは、大手紙では朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、共同通信、時事通信。そのうち、ウェブ版では朝日、毎日、時事が菅氏への評価を見出しに取っている。記者クラブをめぐる指摘を取り上げたのは時事だけで、

「RSFは日本の状況について、記者クラブ制度が『フリーランスや外国人の記者を差別し続けている』と指摘。菅義偉首相に関しても、昨年9月の就任以来『報道の自由をめぐる環境改善のために何もしていない』と批判した」

と報じている。有料データベース「日経テレコン」で調べられる限りでは、20年のランキングをめぐる報道でも、記者クラブ問題について触れたのは時事だけだった。

   21年のランキング上位3か国はノルウェー、フィンランド、スウェーデンと北欧が占め。東アジアでは韓国が42位、台湾が43位と日本を上回った。中国は177位、北朝鮮は179位。最下位の180位はエリトリアだった。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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