レース中に馬の顔を蹴り飛ばす ばんえい競馬での一幕に批判も...馬主側が騎手を擁護する理由

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   北海道帯広市主催の「ばんえい競馬」で、デビュー前の馬の能力検査を行うレース中に、騎手が馬の顔を蹴っていた。その動画がツイッターに投稿され、騒ぎになっている。

   市は、騎手を厳重注意したうえで処分を検討しているが、関係者からは、騎手への擁護の声が出ている。一体どういうことなのだろうか。

  • 騎手が蹴り上げるシーン(ばんえい十勝のユーチューブ公式チャンネルの動画から)
    騎手が蹴り上げるシーン(ばんえい十勝のユーチューブ公式チャンネルの動画から)
  • 騎手が蹴り上げるシーン(ばんえい十勝のユーチューブ公式チャンネルの動画から)

「これはダメだろ」「虐待みたい」と非難も出たが...

   トラブルがあったのは、2021年初めての検査で、4月18日昼過ぎに行われた第18レースだ。レースでは、7頭がそれぞれ重さ500キロ近いそりを引き、2つ障害の坂がある200メートルの直線コースに挑んだ。

   前半は、ほぼ団子状態だったが、第2障害にかかる付近で明暗が分かれる。

   3頭が上り坂で立ち往生し、うち2歳牝馬のドウナンヒメは、鈴木恵介騎手がムチで尻を叩くが、前脚の膝をついたため、顔を何度も地面で擦って苦しそう。

   鈴木騎手がそりから降りて、左横から綱を1回引っ張った後だ。鈴木騎手は、いきなり左足でドウナンヒメの顔を蹴り上げた。

   さらに、横から2回引っ張り、そりに戻るが、その後も降りて、また左足で顔を蹴り上げた。しばらくして、係員が来て、ドウナンヒメがレースに戻ることはなかった。この様子は、ばんえい十勝のユーチューブ公式チャンネルの動画で見ることができる。

   ツイッターでは、20日になって、鈴木騎手が蹴りを入れていて驚いたとして、その動画シーンが投稿されて物議を醸し、1000件以上もリツイートされている。

   「これはダメだろ」「虐待みたいに見えてしまう」などと非難の声は多く、鈴木騎手が過去に起こした不祥事までクローズアップされた。一方で、ばんえい関係者からは、騎手を擁護する声も出た。

   ドウナンヒメは帯広競馬場内の厩舎で馬主から調教師指定を受けて一時預っており、この厩舎の厩務員をしている今井千尋さんは20日、ツイッターでこう指摘した。

「言うことを聞かなくてイライラしたと本人から聞いた」

「膝をついてしまって鼻にたくさん砂が入り込んで手網を引いて頭を起こそうにもまた鼻をついてしまって砂を吸い込むの繰り返しでやむを得ずの判断をしたのだと思ってます 起きることは出来たのですがその後また膝をついていその場で競走中止しました 厩舎までの帰路ずっと酷い咳をしていて鼻から沢山砂が出てきました その砂が肺に入ったり詰まって呼吸が出来なくなったりしなくて良かったです」

   鈴木騎手の行為について、帯広市のばんえい振興課は4月21日、J-CASTニュースの取材にこう答えた。

「現場にいませんでしたので詳細は分かりませんが、騎手に事実確認したところ、馬が言うことを聞かなくてイライラして蹴ったと聞いています。ファンの方々の信用や信頼を失う行為だと認識しています。当日すぐに本人を呼んで、厳重注意しました。現在は、処分を検討しています」

   同課には、21日昼過ぎ現在で、電話やメールで20件以上も意見が来ていて、多くは、「馬がかわいそうだ」といった批判だという。動物愛護団体からは、抗議は来ていないとした。

   鈴木騎手が馬の鼻に入り込んだ砂に対処した可能性が関係者から指摘されていることについては、「本人に聞いたところ、そういう状況ではなかったと話していました」と説明した。

   馬主も横にいてレースを観戦したというドウナンヒメの生産者男性は21日、その状況を取材にこう話した。

馬の生産者「地面で砂食う状態で、窒息しないよう蹴ったと思う」

「馬が地面に何度も顔を着けたので、我々の言う『砂食う』状態で、窒息するかしないかでした。馬は700キロぐらいするのもいますので、血流障害でしびれて前脚が立たなくなっていました。顔が埋まって、呼吸が荒くなり、人の力では動きませんので、顔を横に向けるために(騎手の左足で)打ったのだと思います。こうしたことは、昔はしょっちゅうありましたよ」

   鈴木騎手がそういう状況ではなかったと話したと、帯広市側が言っていることについては、こんな見方をした。

「一流のジョッキーには、プライドがあり、言い訳は言わないと思います。そばで見ていた厩務員の言うことが正論だと思いますね。馬が憎たらしくて打ったとは思っていません。砂が入り込んでも違う方法で対処してほしいというのは、分からないでもないですが、市の人は、馬のことをよく知らないんでしょう。鈴木さんと打ち上げで飲んだときは、鈴木さんは、『力及ばず、申し訳ありません』と謝罪していましたが、馬主もその場にいて、『とっさの場合は、仕方がなかった』と意見が一致していました」

   追記(2021年4月30日):スポーツニッポンの記事によると、鈴木騎手は、同日に開いた帯広市の会見に反省の手紙を寄せ、「自分としては何度も手綱を使い起そうとしましたが起き上がれず、あのままの状態では馬にとって相当な負担が掛かり、早急に起さないといけないと思い、とっさの判断で、馬をびっくりさせ、顔が上がったその反動で起こそうとした結果です。決して馬に腹が立ち、イライラしてとった行動ではないということを分かってもらいたいです」と馬の顔を蹴った理由を説明した。同様な内容は、日刊スポーツも書いている。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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