鉄道博物館の「東高西低」くっきり 関東は小田急も新設、関西大手はゼロ...その差はどこに?

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   神奈川県海老名市に小田急電鉄の「ロマンスカーミュージアム」が2021年4月19日、開館する。特急ロマンスカーの歴代車両展示を目玉とする小田急の企業博物館だが、これで関東の鉄道事業者としてはJR東日本・東京メトロ・東武鉄道・東急電鉄・京王電鉄に続いて自社車両などを展示する博物館を運営することになった。

   しかし、関西に目を向けてみると私鉄系の博物館はひとつもなく、はっきりと「東高西低」の傾向が顕著だ。なぜ、関東と関西でこれほど差が顕著になったのだろうか。

  • 小田急電鉄のロマンスカーミュージアム(プレスリリースより)
    小田急電鉄のロマンスカーミュージアム(プレスリリースより)
  • 小田急電鉄のロマンスカーミュージアム(プレスリリースより)

かつては自社の遊園地でも展示していたが...

   前述のように、関東ではJR東日本(鉄道博物館)・東京メトロ(地下鉄博物館)・東武鉄道(東武博物館)・東急電鉄(電車とバスの博物館)・京王電鉄(京王れーるランド)が既に自社の博物館を運営し、小田急のロマンスカーミュージアムは6館目の鉄道博物館になる。また京急電鉄も横浜市の本社ビル内に入場無料の展示施設として「京急ミュージアム」を開設している。

   しかし関西にはこのような常設の鉄道博物館はJR西日本の京都鉄道博物館(京都市)しかなく、大手私鉄5社(近鉄・阪急・阪神・京阪・南海)はいずれも博物館を持たない。京都鉄道博物館の他には、京阪電鉄が沿線のくずはモール(大阪府枚方市)に展示スペース「SANZEN-HIROBA」を設け、旧3000系電車を1両展示しているくらいだ。

   「東高西低」」が顕著になっている私鉄系の鉄道博物館だが、まず関西私鉄は博物館の目玉になりうる車両保存にさほど積極的でない事情がある。近鉄は大手私鉄最長の路線を展開しているが、社内の保存車両は創業時の「デボ1形」1両のみにとどまる。小田急が歴代の特急ロマンスカー車両を最低1両保存しているのとは対照的に、近鉄では初代二階建て車両の「ビスタカー」などの特急型車両であっても現役車両以外はすべて解体されている。

   小田急と近鉄の差は極端なケースではあるが、関西私鉄は関東各社に比べると保存車両数は少ない。多いところでは阪急が創業時の「1形」など7両を保存し、時折イベントで公開している程度である。

   運行もせず状態を保つだけで手間がかかり、保管場所が必要な車両は現場から見れば「お荷物」で、小田急でも増発に伴う車両増備のためロマンスカーの保存車の一部を解体した過去がある。

   ただし常設の展示施設がなかったわけではなく、かつて各社が経営していた遊園地に付属して車両などの展示を行っていた時代があった。阪急の宝塚ファミリーランド内にあった「のりもの館」、南海のみさき公園、近鉄のあやめ池遊園地、阪神の甲子園阪神パークにはいずれも自社の引退車両の展示スペースがあった。

   しかしこれら私鉄系遊園地はレジャー産業の変化で経営難に陥り閉園を余儀なくされていずれも現存しない。また博物館ともなればそれなりの土地の確保が必要であるから、経営上のメリットを見出せない、というのが関西私鉄各社の鉄道遺産に対するスタンスだろう。

関西私鉄の「文化財」は球団?

   しかし現状をもって関西の私鉄が自社の歴史を軽視している、とまでは一概には言えない。広義の企業ミュージアム、というくくりで視点を広げると、プロ野球にフォーカスした施設が21世紀に新しくオープンしているためだ。

   阪神甲子園球場内の「甲子園歴史館」(2010年開業)は当然阪神タイガースと高校野球ゆかりの博物館であるし、阪急が西宮球場跡地に2008年に開業させた阪急西宮ガーデンズ内の「阪急西宮ギャラリー」では阪急ブレーブスや阪急電車の歴史を、当時の資料や模型で伝えている。最寄りの西宮北口駅で1984年まで存在した通称「ダイヤモンドクロス」と呼ばれた、神戸線と今津線が平面で交差する様子も模型で再現されている。

   南海ホークスの本拠地だった大阪球場跡地のなんばパークス(2003年開業)内にも「南海ホークスメモリアルギャラリー」が設けられ、南海ホークスの球団史を見学できるようになっている。いずれも保有した球団の歴史を、ゆかりの地で回顧できる施設だ。

   ロマンスカーをブランドとしてPRする小田急のように、自社の鉄道そのものを財産として公開してファンや沿線住民の支持を得るか、それとも沿線の文化という大きなくくりの中で何を重視して顧客に伝えていくかの考え方の違いが、各社の文化施設に反映されているようである。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)

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