ツイッターアカウント「社民党江戸川総支部」が、同党の常任幹事・伊是名夏子氏による「車いすの階段移動」をめぐる問題について「不快な思いをさせた」と謝罪するツイートを投稿したものの、2021年4月11日に社民党本部と「協議」の上で当該ツイートを削除したと報告した。
ツイッター上では、社民党本部が党員に対して「言論封殺」を行ったのではないかとの指摘もある。党の見解はどうなのか、担当者に話を聞いた。
「多くの方が不快に思ってしまう結果を招いてしまいました」
議論になっているのは、コラムニストである伊是名氏が4月4日に自身のブログに投稿した内容。骨の折れやすい障害「骨形成不全症」を抱え、車いす生活を送る伊是名氏が、JR東日本の無人駅「来宮駅」(静岡県熱海市)を利用しようとした際、JR側から「乗車を拒否」されたというものだ。J-CASTニュースの4月7日の取材に対し「駅員が合理的配慮の必要を分かっておらず、体制の問題を感じた」と、バリアフリー体制の不備を指摘した。
また、社民党機関紙宣伝局の事務局長は4月5日のJ-CASTニュースの取材に対し、伊是名氏のブログ内容について「政治活動の一環ではない」としつつ、駅のバリアフリー問題に関しては「党として取り組む必要はある課題」だとしていた。
一方、ツイッター上では、JR側に事前連絡をしなかった伊是名氏の行動を疑問視する声も聞かれていた。そうした中、4月9日にツイッターアカウント「社民党江戸川総支部」は、伊是名氏の行動を批判するようなツイッターユーザーの投稿に、以下のような返信を送った。
「当党の伊是名の行動により不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。伊是名は障害者の立場からその権利を主張することに熱意を持つあまり、今回多くの方が不快に思ってしまう結果を招いてしまいました。その件について、一支部の立場ではありますが、心よりお詫び申し上げます」
「党の政策方針に明らかに反する様な表現を使ってしまった」
「江戸川総支部」はその後も、伊是名氏の行動を疑問視するようなツイートを相次いで投稿。しかし、4月11日には「党本部と協議」した結果、一部のツイートを削除したと報告した。4月13日には投稿削除に至った理由などを、10ツイートにわたり説明している。
「江戸川総支部」は13日のツイートで、「一地方支部のアカウントとはいえ、発信内容が『一線』を超えて党の政策方針に明らかに反する様な表現を使ってしまった」と説明。自身も障害を持ち、「障害者が声を上げることの難しさ、そしてなかなか理解を頂けない現状は当事者として理解しているつもりです」とした上で「相手のその気持ちに寄り添うあまり、対話の中で『障害者が声を上げること』を否定してしまう様な表現が出た」と振り返った。
また、ツイートを削除した経緯については「(社民党の)本部担当者と文字通りの"協議"をLINEにて行い、提示された意見・内容に党員として納得しましたので提案を受ける形で一部ツイートについて削除いたしました」と説明した。
「江戸川総支部」はツイートの削除について「(本部から)一方的に命令・制限等されたわけでないことは明記しておきます」と伝えた。しかし、一連の流れをめぐっては、社民党による「言論封殺」がおこなわれたのではないかという憶測もツイッター上では聞かれていた。
「言論弾圧をすることは基本的にはできません」
J-CASTニュースは13日、この「江戸川総支部」とやり取りを行ったという社民党全国連合組織団体局の担当者に電話で取材した。担当者によると、「社民党江戸川総支部」の「中の人」が江戸川区在住の社民党員であるのは確かだという。その上で、9日に「江戸川総支部」が投稿した内容について、次のような見解を示した。
「快・不快の話を出してしまうと、障害者をはじめマイノリティというのはマジョリティがわかるようにものを言わなければいけない。何か権利を主張するときは『マジョリティが理解できるかどうか』が一番になってしまう。それは、マイノリティの権利主張を封殺することにつながります」
「(江戸川総支部のアカウントからは)伊是名の件について『やり方を考えろ』という人たちと『対話』を試みているというスタンスだ、という説明を受けたんですね。その『対話』自体は無益だとは思いませんし、少人数の会話として議論をしていく意味では、理解ができる。ただ、(障害者に対する差別的なスタンスを持つ人もいる)ツイッター言論の場でこれをやってしまうと差別に加担するよね、という話をした。(江戸川の)担当者も『それはそうだ』と納得し、削除に至りました」
「言論封殺ではないか」との指摘には、どう答えるのか。
「私たちは党ですので、『あの人(党員)はこう言って』『この人はこう言って』という(風に言論が食い違う)のはやっぱり『ない』わけです。もしも(江戸川の担当者が)離党した場合、そこで何を言うかは私には止められない。社民党が、党員に対して言論弾圧をすることは基本的にはできません」
「党はあらゆる差別に敏感でなければならなくて、少しでも差別の加害者に加担するような言論は『これはどうなの』と、党員間でお互いに言い合っています。その一環で、ああいう(削除という)動きになった、という風にご理解いただければと思います」(2021年4月14日14時20分追記)社民党全国連合組織団体局の回答部分の表記に一部誤りがあったため、修正しました。
一地方支部のアカウントとはいえ、発信内容が「一線」を超えて党の政策方針に明らかに反する様な表現を使ってしまったことも事実です。
— 社民党江戸川総支部 (@sdp_edogawa) April 12, 2021
党員はじめ、支持者・支援者の方々には多大なるご迷惑とご心配をおかけしてしまい、本当に申し訳ありません。
3/10 https://t.co/pE0vqXHzk1