松井珠理奈「卒コン」異例演出のなぜ 後輩にステージを譲った理由、「あの総選挙」から読み解く

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   SKE48の松井珠理奈さん(24)の卒業コンサートは、通常であれば「主役」が大半の楽曲に出演する、アイドルの卒業コンサートの慣例からは離れた異例の構成となった。

   コンサートは2021年4月11日に日本ガイシホール(名古屋市南区)で昼夜2公演が行われ、昼公演では、アンコールを含めて全28曲のうち10曲を後輩メンバーのソロ曲にあてた。夜公演でも若手メンバーによるユニット曲のコーナーが設けられた。

   この根底にあるのが、グループのメンバーに対する信頼と「成長してほしい」という思いだ。特に前者については、18年の選抜総選挙での出来事が大きく影響していたことを初めて明らかにした。松井さんが48グループ内でのSKE48のあり方について相半ばする感情を抑えきれなくなる中、後輩メンバーの取った行動で信頼を深め、卒業の決断を後押ししていた。

  • SKE48の松井珠理奈さんは、メンバーが作った花道を歩いてステージを後にした (c)2021 Zest,Inc./AEI
    SKE48の松井珠理奈さんは、メンバーが作った花道を歩いてステージを後にした (c)2021 Zest,Inc./AEI
  • 高柳明音さん(右)の卒業コンサートには、卒業生の松井玲奈さん(左)がサプライズで登場した (c)2021 Zest,Inc./AEI
    高柳明音さん(右)の卒業コンサートには、卒業生の松井玲奈さん(左)がサプライズで登場した (c)2021 Zest,Inc./AEI
  • SKE48の松井珠理奈さんは、メンバーが作った花道を歩いてステージを後にした (c)2021 Zest,Inc./AEI
  • 高柳明音さん(右)の卒業コンサートには、卒業生の松井玲奈さん(左)がサプライズで登場した (c)2021 Zest,Inc./AEI

「大きな会場で、ソロで歌うということを経験してもらって成長してもらいたい」

   松井さんは21年2月掲載のJ-CASTニュースのインタビューで、卒業コンサートの演出について「SKE48の未来を感じられるような内容にできたらいい」として、松井さん以外のメンバーにも出番を分配したい考えを説明。

「ぜひ、私のファンの方以外にも見ていただきたいですね。自分の推しメンが、『あっ、こんなことになってる!』という可能性もあるので。(笑)」

と話していた。

   この考え方が形になったといえるのが、昼公演のソロパートだ。松井さんは昼公演と夜公演の間に報道陣の取材に応じ、特に昼公演は「(松井さんによる)プロデュースコンサートのような気持ち」で準備に臨んだことを明かした。ソロパートの狙いについて

「いろんなメンバーに大きな会場で、ソロで歌うということを経験してもらって成長してもらいたいなと思った」

と説明した。10人の中では、20年7月に劇場デビューしたばかりの10期生から林美澪さん(12)も抜擢。林さんはパフォーマンス直後のトーク部分(MC)で、

「今日は初めてひとりで、そこ(ステージ)で歌って、すごい緊張しました。手汗がやばかったです」

と興奮冷めやらぬ様子で話した。須田亜香里さん(29)は、夜公演後の動画番組で、演出の意義を

「後輩ひとりひとりの魅力とかを見た上で曲を選んで、見てくださっている方にも『SKEって、今こんなすてきな子がいるんだよ』というのを見せてくれたんだろうな、というのが...」
「おじゅりちゃんが『SKE見て!すてきでしょ!』という感じがあふれているのが、いとおしかった」

と解説。ソロパートで板野友美さん(29)の「Dear J」を披露した8期生の井上瑠夏さん(19)も番組の中で、松井さんの指導ぶりを振り返った。

「『頑張ってね』じゃなくて『一緒に頑張ろうね』と言ってくださったのが、すごく心強くて...。すごくうれしかったです。そのひとことが」

総選挙イベント前のコンサート、リハに出られなくなった理由

   では、なぜ松井さんは自らの卒業コンサートで、後輩の活躍を願ったのか。その一端が垣間見えるのが、夜の部の終盤のあいさつだ。

   このあいさつでは、メンバーへの感謝について最も多くの時間を割いた。松井さんは「話したことない話かもしれないけど...」と切り出し、18年6月にナゴヤドーム(名古屋市東区、現・バンテリンドーム ナゴヤ)で行われた選抜総選挙の開票イベントについて話し出した。開票イベントの前には、全国の姉妹グループかメンバーが集まってコンサートが行われた。そのリハーサルでの出来事だ。

「もう前日のリハーサルからすごい悔しくて。なんでナゴヤドームでやるのにSKEの曲全然ないんだろうなー、とか、なーんかいつもSKEっていつも損してるよなあ、とか、なんでこんな頑張ってるのに届かないかなあ...、とか。そんなこと思ってたら、リハーサル出れなくて、ひとりで部屋で泣いてて...」

   当時の様子の一部は、「ドキュメンタリー映画『アイドル』」(18年公開)で明らかにされている。コンサートのセットリスト(曲順)にSKE48の楽曲が少なく、松井さんが感情を爆発させる場面だ。

「正直、名古屋のこのホームでやるし、私たちがずっと来たかったナゴヤドームでやるのに、どうして、SKEの曲をこんなにもやらせてもらえないんだ。SKE全員で、SKEだけで立つ機会をなぜもらえないんだ」
「もう我慢の限界。10年頑張った、48グループのために。そうすればSKEが1番と認められると思ってた。でも違う」

「なんでうちらの珠理奈さんがリハ行かないんすか!カッコいい珠理奈さん見せてくださいよ!」

   当然のことながら、1位が確実視されていた松井さんがいないとなれば、リハーサルはストップ。そこで説得に来たのがSKE48のメンバーだった。

「で、たぶんね、珠理奈がいない、珠理奈がいない、リハ始められない、ってなったんでしょうね。そしたらね、メンバーがね、全員部屋に来てくれてね、『なんでうちらの珠理奈さんがリハ行かないんすか!カッコいい珠理奈さん見せてくださいよ!』って、泣いてる私にみんなが駆け寄ってきてくれて...。本当に多分全員来てくれたよね、あのときね、めっちゃ...。それでみんなに引っ張られて、ナゴヤドームのステージのリハに立てて。みんな下から、なんかいっぱい応援してくれて...」

   松井さんはコンサートの本番で倒れて退出。その後の開票イベントには出演したものの、18年7月から9月にかけて療養に専念するため活動休止を余儀なくされた。それでも、「もし、あれがなかったら、もっと早く多分倒れていたし、多分総選挙いなかったと思います。それぐらい、気持ちも体も辛かったです」。

   当時の厳しい状況を思い出したのか、須田さんや大場美奈さん(29)は表情を曇らせ、涙もあふれた。そんな中で、松井さんはメンバーへの信頼感が卒業への決意につながったことを明かした。

「でも、それを一番分かってくれるのは多分メンバーだから、メンバーが私の後を、こうやってちゃんとついて来てくれたプラス、なんかいつの間にかメンバーに引っ張られてきたんだなと思ったら、なんかすごい頼もしくて...、本当にね、みんなが頼もしくて、だから卒業を決められました。みんなありがとう」

   松井さんはステージ上のメンバーに深々と一礼。メンバーが作った花道を歩いてステージを後にした。

   コンサートでは、松井さんが曲の間に10センチ以上も髪を切ったり、同期の1期生11人が出演したりするなどサプライズも多数だった。松井さんの退出後にステージに残ったメンバーは、新曲「オレンジのバス」を初披露。松井さんが作詞した未発表曲で、やはりサプライズ演出でコンサートは締めくくられた。

高柳明音の卒コン、「盟友」松井玲奈がサプライズ登場

   松井さんのコンサートに先立つ4月10日には、「ちゅり」こと2期生の高柳明音さん(29)の卒業コンサートが行われた。本来は20年4月に横浜市内で予定されていたが、コロナ禍で中止になり、1年越しの開催になった。終盤には、高柳さんの盟友ともいえる1期生の松井玲奈さん(29)がサプライズで登場(珠理奈さんのコンサートにはビデオメッセージを寄せた)。出演は数日前に決まったといい、「バイクとサイドカー」をぶっつけ本番で披露した。

   もし20年に開催できていたら玲奈さんの出演はかなわなかったといい、玲奈さんは

「でもね、1年前に出て欲しいって約束してたので、1年越しの約束を果たすことができました」

と感慨深げに話した。玲奈さんが

「ちゅり推しのみなさん、高柳明音の人生はまだまだ続くので...こんなにお祭り騒ぎしている人間、いないと思うんですよ。なので、今後も高柳明音をよろしくお願いします」

と客席に頭を下げると、高柳さんは「保護者来ちゃった、ほんとに...」と笑顔を見せていた。

   高柳さんは4月27日、松井さんは4月29日に、それぞれ本拠地のSKE48劇場(名古屋市中区)で卒業公演を行い、正式にグループを離れることになっている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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