迷走した「IT戦略」
内閣委員会調査室は昨年12月の「立法と調査」で、デジタル庁の議論への参考として「IT政策の経緯」をまとめた。それをもとに振り返ると、政府のIT政策は次のように移り変わった。
◎日本のIT政策は、2000年の「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」(IT基本法)に基づいて進められた。
◎内閣のIT総合戦略本部が中心となり、01年に「e-Japan戦略」を策定。「5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す」として、超高速ネットワークインフラ整備、電子商取引、電子政府の実現、人材育成の強化などを掲げた。
◎03年年7月、「e―Japan戦略Ⅱ」を策定。医療や教育を含む各分野におけるIT利活用の推進を掲げる。
◎06年1月、「IT新改革戦略」を策定。「我が国はインフラ整備においても利用者のレベルにおいても世界最高水準となり、最先端のマーケットと技術環境を有する世界最先端のIT国家となった」と評価。2010年度を目標に、国・地方公共団体に対する申請・届出など手続におけるオンライン利用率を50%以上とすることなどを掲げる。
◎2010年4月「デジタル新時代に向けた新たな戦略三か年緊急プラン」を決定。デジタル技術の活用が遅れており、取り組みを加速化する重点分野として、「電子政府・電子自治体」、「医療」、「教育・人財」の3分野を挙げる。
◎民主・鳩山政権が2010年2月、「新たな情報通信技術戦略」を決定。「国民主権」の観点から、(1)国民本位の電子行政の実現、(2)情報通信技術の徹底的な利活用による地域の絆の再生、(3)新市場の創出と国際展開の3つの柱を掲げる。
◎2012年12月に発足した第2次安倍政権のもとで13年6月、「世界最先端IT国家創造宣言」を決めた。宣言では、ITを成長エンジンとして活用し、電子政府については、利便性の高い電子行政サービスの提供、国・地方を通じた行政情報システムの改革等の推進をあげた。
◎コロナが感染拡大した2020年7月、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」を閣議決定。(1)遠隔・分散に対応した制度・慣行の見直し(2)取得促進(3)国と地方を通じたデジタル基盤の構築、(4)データ戦略、行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)のためのデータ基盤などを掲げた。
以上見てきたことからわかるのは、政府は一貫して「IT先進国」を目指しながら、抜本的な改革をしてこなかった、ということだ。つまり政権交代を挟みながらこの20年、電子政府、医療、教育という改革目標を正確に認識しながら、課題はその都度先送りし、「世界最先端」などの看板だけを掛け替えてきた。そういっては、言い過ぎだろうか。