同人誌印刷所の苦境に「少しでも足しになれば」 映画パンフ制作に抜擢、配給会社が粋な発注

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   新型コロナウイルス感染症の拡大により、多種多様な業種が苦境に立たされた。個人が趣味で制作する本「同人誌」の印刷に携わる、いわゆる「同人誌印刷所」もその一つである。

   コミックマーケットをはじめとする多くの同人誌関連イベントが中止となり、受注が激減しているのだ。

   そんな状況を受けて動いたのが、映画の配給などに携わるTCエンタテインメント(東京都港区)。同人誌印刷所「栄光」(広島県福山市)に、映画パンフレットの印刷・製本を依頼した。

   J-CASTニュースは、両社にパンフレットの制作経緯などを取材した。

  • 大人気映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー(BTF)」の公開35周年を記念したパンフレット
    大人気映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー(BTF)」の公開35周年を記念したパンフレット
  • 「パンフとしては異例の64P」とても分厚い
    「パンフとしては異例の64P」とても分厚い
  • 「エンボスニス加工」という特殊印刷が施されている
    「エンボスニス加工」という特殊印刷が施されている
  • カラー印刷ではなく質感の違いでロゴを浮き出させている
    カラー印刷ではなく質感の違いでロゴを浮き出させている
  • 奥付に『印刷:株式会社栄光』と記載
    奥付に『印刷:株式会社栄光』と記載
  • 上映回によってはほぼすべての観客が購入していったという
    上映回によってはほぼすべての観客が購入していったという
  • 大人気映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー(BTF)」の公開35周年を記念したパンフレット
  • 「パンフとしては異例の64P」とても分厚い
  • 「エンボスニス加工」という特殊印刷が施されている
  • カラー印刷ではなく質感の違いでロゴを浮き出させている
  • 奥付に『印刷:株式会社栄光』と記載
  • 上映回によってはほぼすべての観客が購入していったという

同人誌印刷所の「少しでも足しになれば」

   TCエンタテインメントが依頼したのは、大人気映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー(BTF)」の公開35周年を記念したパンフレットだ。2020年12月4日から4Kニューマスター、日本語吹替版&字幕版を映画館で上映するのに合わせ、劇場販売アイテムとして制作した。

   依頼を受けた栄光は、多くの同人作家から親しまれている老舗の同人誌印刷所だ。しかしコロナ禍を受け、同人印刷の注文が激減してしまったという。同社の代表取締役社長である岡田一さんは昨年、J-CASTニュースの取材にその苦境を明かしている。(「『同人誌印刷所』の窮地は、日本の『同人文化』の危機だ 業界組合・イベント主催が語る『生態系』」、2020年7月28日配信)

   TCエンタテインメントは、こうした状況を受けて同人誌印刷所への依頼を検討したという。

「コロナ禍でコミケや同人イベントの中止が相次ぎ、印刷会社が苦境というニュースを目にしておりましたので、少しでも足しになればと考えた次第です。
もともと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のリバイバル上映は、今回配給協力していただいている映画ファン団体"V8J絶叫上映企画チーム"が上映リクエストを募ったことから始まった企画でしたので、ファンありきの動きができないかと考えていました。
それで同人誌印刷会社を検索する中で、特殊加工を得意とする栄光さんが目に留まり相談しました」

   実際に栄光の特殊加工技術は、同人作家の間で根強い人気を誇っている。同社は20年8月に印刷注文用の資料として「栄光 特殊装丁本 2020」という有償の見本誌を発行したが、初版1000部はわずか90分で完売。現在までの累計販売数は5500部を超えたという。

   苦境に立たされた印刷所への購入支援といった意味合いもあるとはいえ、税込み1540円の「見本誌」が大ヒットしたこと、その本で展開された栄光の特殊装丁技術は、SNS上を中心に話題となっていた。

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