日本航空(JAL)が2021年4月5日、大型旅客機のボーイング777型機のうち、国内線仕様機を20年度内に退役させたと発表した。同型機が使用しているエンジンが日米で不具合を起こして運航停止が続いていることから、退役が早まった。
777のうち777-300型機は、JALでは唯一500人の乗客を乗せられる機体だ。運航停止の影響は、後継機を投入することなどでカバーしているが、座席数は777-300よりも100以上少ない。コロナ禍による需要減で大型機の出番が減る中、エンジントラブルがさらに小型化を後押しする形になっている。
2月21日に運航停止を指示されたまま...
退役が早まったのは、国内線仕様機として運航されてきた、米プラット・アンド・ホイットニー(PW)社製のエンジンを搭載した777型機。PW社製のエンジンを積んだ777をめぐっては、20年12月にJAL機が那覇空港を出発直後に不具合が発生して引き返す事案が発生。エンジンには破損が確認され、国交省は「重大インシデント」に認定し、JALと全日空(ANA)は点検の頻度を増やすなどして対応していた。
21年2月には米ユナイテッド航空機が運航する機体が、米コロラド州のデンバー空港を離陸した直後にエンジンから出火する事故を起こし、デンバーに引き返した。これを受けて国交省は2月21日、PW社製エンジンを積んだ777型機の運航停止をJALとANAに指示していた。国際線仕様の777型機のエンジンは米GE社製で、運航停止の対象外だ。
運航停止の対象はJALが13機、ANAが19機。JALの発表によると、この13機は20年度に6機、21年度に7機を退役する計画だったが、運航停止の影響で20年度中に全13機を退役させた。
オリパラ特別塗装機も大会開催を待たずして...
13機の中には、東京五輪・パラリンピックのための特別塗装機「みんなのJAL2020ジェット」1号機も含まれる。20年10月末までの予定で19年4月に就航したが、開催を待たずして退役することになった。
777型機は、「ジャンボジェット」の愛称で知られ、高度経済成長期の大量輸送のシンボルのひとつでもあったボーイング747型機の後継として登場。国内線仕様の747-400型機には546人が乗ることができたのに対し(11年の退役時の座席配置の場合)、96年に登場した777-200型機には375人、98年に登場した長胴型の777-300には500人が乗ることができる(21年時点の座席配置の場合)。777型機は、主に東京(羽田)と札幌(新千歳)、大阪(伊丹)、福岡、沖縄(那覇)を結ぶ、全国的にも乗客が多い路線で活躍。特に777-300型機は羽田-那覇線の大量輸送を多く担った。今回の運航停止で、約25年にわたって活躍してきたJALの国内線仕様機が、ひっそりと姿を消したことになる。
777運航停止の穴はA350、787-8、国際線仕様の767、777-200で埋め合わせる
JALの発表では、777が国内線で運航できなくなった分の対応について
「快適性に優れた低騒音・省燃費機材のエアバスA350 型機の計画通りの導入や伊丹線への就航前倒し、国際線仕様ボーイング767型機の国内線への投入などの対応を行い、提供座席数の確保に努めます」
などと説明している。
実際の運航状況を見ると、元々777の後継と位置づけて導入を進めてきたエアバスA350型機(391~369人乗り)や、中型機のボーイング787-8型機(291人乗り)、発表にある国際線仕様の767型機(227~237人乗り)以外にも、国際線仕様の777-200型機(312人乗り)を国内線に振り向けたりして対応している。元々コロナ禍で減便が続いていたこともあり、大きな影響は出ていない。
国内線の777-300型機の退役で、現時点でJALとして最も多くの乗客を乗せられるのはエアバスA350型機になる。ANAの国内線仕様のボーイング777-300型機は514人を乗せられるものの、運航停止が続いている。運航再開のめどは立っておらず、JALと同様、このまま退役する可能性もある。大型機による大量輸送よりも小型~中型機による多頻度輸送が重視される中で、日本の航空会社では「500人乗り機」は風前の灯火だ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)