「戦争に協力した罰」
もう一つは、「戦争責任」だ。橋田さんは戦前、筋金入りの軍国少女だった。同世代の多くがそうだったように。だから結果的に、戦争に協力したという負い目があった。庶民ひとりひとりにも「戦争責任」があると感じていた。
それだけではない。女学校のころ、ひそかに手紙のやりとりをしていた男子校の生徒は、のちに学徒動員で特攻隊になり戦死している。悲報を聞いたとき、「一生、男を好きになるのはよそう」と覚悟した。
自分の人生が戦争に翻弄されたからこそ、戦争の恐ろしさ、平和の尊さをドラマに託したい。そんな思いを「おしん」で貫いた。
おしんの長男は戦死する。夫は軍の納入業者として戦争に協力したことを悔い、責任をとって自殺する。この設定は、「戦争に協力した罰」だったという。
じっさい橋田さんは、自殺するおしんの夫にこう語らせている。
「私にとって死を選ぶことは、戦争に協力した人間として、当然受けなければならない報いです。たとえ、生きたとしても、罪を背負って一生歩くのは、死ぬことよりも、はるかに苦しいでしょう」