おしんのモデルは・・・
夫の実家から姑がやってくると、小言が始まる。風通しを良くするために、障子を開けていると、「畳が焼けるだよ」。布団を干していると、「布団は、西日に当てるもんじゃにゃあ」。関西風の味付けにしていたら、「水くさい」。健康のために塩分を控えめにしているなどと言い返そうものなら、「東京の嫁はずいぶん口答えするで」と周囲に言いふらす。(自著『渡る老後に鬼はなし』、2016年、朝日新聞出版)
「おしん」では意地の悪い姑が、おしんを苛めた。橋田さんは、自分の姑(義母)に文句を言われることを恐れていた。あの姑は、私をモデルにしているに違いない、と。
ところが、毎日番組を見ていた義母の反応は予想外だった。
「私もお姑さんには苦労したよ」
意外にも義母は、「自分がおしんのモデル」と思い込んでいた。義母の姑は厳しいことで近所でも有名な人で、いじめられたらしい。義母は義母なりに苦労したんだということを痛感した。
橋田さんは、日常のささいな出来事をきっかけに、家族や親類、御近所で巻き起こる騒動を巧みにホームドラマにするのが得意だった。そこには実人生の様々な体験が、巧みに生かされていた。